私だ、と思った。若者ではないけれど、何を言っても届かない無力感というか、そう、同類項なのだ。

 タモリさんがテレビ番組「徹子の部屋」で、2023年はどんな年になりますかという黒柳徹子さんの問いに、「新しい戦前」と答えた。時代を飄々と見つめてきたタモリさんが的確に捉えた言葉。でも、戦争は起こしちゃいけないのだ。この地が戦地にならないようにするにはどうすればいいのだろう。

 8月は戦争の記事を多く目にする。8月12日配信の毎日新聞で、人間魚雷「回天」に乗ることになっていた当時の青年の話を読んだ。「米軍の飛行機が失敗して海に墜落した一人の兵士を救おうとしていた。衝撃を受けた。我が国は、一人の命は兵器としてみなされる。それが相手は一人の兵士の命を救おうとしている。こんな国に勝てるわけないと思った」。すごく胸にきた。

 日本という国は、真心とか、和をもって貴しとなす、とか平和思想があるのに、同時に、「お国のために」自己を犠牲にしたり、隠滅したりする文化もある。日本だけではないとは思うが、日本の優しさ、マナーの良さが際立つから、逆にそのギャップに闇のようなものを強く感じる。

「人権というものにおいて、どうも日本は世界の中で取り残されているという気もしますからね。(名古屋出入国在留管理局の収容施設で)ウィシュマさんが亡くなって、だからうんと変わるのかと思ったら、何かますます悪くなる」

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