主治医の一言で手術を決断

 ところが、6歳頃になると体重に対して水分量が足りなくなりました。エンシュアの味は好きで哺乳瓶から飲んでくれるのですが、中身がエンシュア以外だとわかると嫌がりました。水、お茶、イオン水など水分補給に良さそうなものをいろいろ試しましたが、飲んでくれません。熱中症のような症状が続き、ついに病院から胃ろうの造設手術を勧められました。

 でも、どんなに危険だと言われても、おなかに穴をあけて胃ろうをつくることに、はじめは大きな抵抗がありました。「私が頑張って食べさせれば胃ろうは必要ない」という思いが強く、何とか食べさせようとかなり時間をかけて口の中に無理やり食べ物を入れた日もありました。ただ、長女は私のそんな不安やイライラを誰よりも見抜きます。悪循環になりそうになっていた時に、主治医のター先生の「これ以上は放っておけません」という言葉で、冷静に夫と相談することができ手術を決めました。

胃ろうはストレスフリー

 ところが、造ってみると胃ろうはストレスフリーでした。長女が嫌がることなく水分も薬も栄養も入れることができ、発熱時にもわざわざ受診して点滴をする必要がなくなり、入院回数がグッと減りました。自分でもどうしてあんなに意地になって拒否したのか分からないほど、お互いにとってメリットばかりでした。

 現在の長女は学校やデイサービスではミキサーでペースト状にしたものを食べることができますが、なぜか自宅では生クリームやプリンやヨーグルトなどのスイーツ以外を嫌がります。それでも、胃ろうから注入できることにより水分不足や栄養不足になる心配はなく、今でも胃ろうにとても助けられています。

最新型の医療機器で快適に

 さて。先月このコラムでも書きましたが、長女は今年7月に人工呼吸器の入れ替えのために数日間入院しました。タッチパネルがついた最新型はとても使いやすく快適なのですが、もうひとつ大きく変わったことはアラーム回数が激減したことです。3年前に人工呼吸器を導入した時には、長女の呼吸がどのタイミングで浅くなるのかが不明で、危険な状況を見逃さないために変化があるとすぐにアラームが鳴るようにセットされていました。でも3年が経過し、長女の睡眠リズムや首の動かし方などの特徴が把握でき、苦しくなった時には酸素飽和度を測定するサチュレーションモニターでも判断できることが分かったため、アラーム設定を変更し、アラーム音が鳴るまでの時間を少し延ばしてもらったのです。

 医療的ケア児の夜間ケアはかなりの長期戦です。我が家に限らず、保護者の慢性的な睡眠不足は深刻な問題です。こうして、子どもも保護者も医療機器に慣れていくにつれ設定調整をして、お互い少しでも快適に過ごす工夫はとても重要だと実感しました。今回のメンテナンスにより負担軽減策を見つけられたのは、大きな進展だったと思っています。

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