逆に、少し個性的だとか、引っ込み思案な子、元気すぎる子も発達障害にしてしまうといった「過剰診断」になっているところもあるのだろうか。

「たとえばADHDは『注意欠如・多動性障害』と言われますけれど、『注意力がありますか』と聞かれたら、たいていの人は『自信がない』と答えますよ。行動のチェックリストだけを見ると、かなりの人が当てはまるのではないでしょうか。『自閉スペクトラム症(ASD)』も『空気が読めない』とか『相手の気持ちがわからない』などと言いますが、人の心はいろいろなものに影響を受けます。たとえば、災害に直面したら、普段は気配りのできる人でも他人のことなんか関係なく逃げるかもしれませんよね。日々、いじめを受けている子どもたちも相手の心を考える余裕がないこともあるわけです。ですので、育ちの中でのコミュニケーションの質的な問題を、確認する必要があります。また空気が読めないだけでASDだと診断できるわけではなく、いわゆる、『こだわり』もきちんと確認しないといけません。なんでもかんでも発達障害では困るし、発達障害やそれ以外の精神疾患を見逃してはいけない。我々児童精神科医は気をつけなければいけないと肝に銘じています」

資料提供:宇佐美政英医師

診断が子どもの人生にどう影響するか

 さらに宇佐美医師は、「診断をつけることと、その後の支援が連続していることが大事」と指摘する。

「診断を確定することだけにこだわるのではなく、その診断によって子どもにどのような支援がなされるのかが重要です。診断で子どもが社会から排除されたり差別されたりするのなら、伝えることに躊躇(ちゅうちょ)するわけです。現実に、診断はつけたけれど、『うちでは診ることはできないので、専門病院に行ってください』というクリニックもあります。診断をつけたはいいが、その後どうしていいのか路頭に迷うのでは、本末転倒でしょう。診断をつけることがその子の生活や人生にどう関係するのかというところまで勘案しながら、診断をつけていく意味を考えるべきだと思います」

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子どもにとっていい児童精神科医とは