児童精神科医が少ない中、診療を必要とする子どもの数が増加し、初診まで何カ月も待たなければならないような事態が起きている。少しでも早く診てもらえる医療機関を受診するケースも多く、さまざまな問題が生じている。国立国際医療研究センター国府台病院・児童精神科診療科長の宇佐美政英医師に話を聞いた。
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早さ優先で治療を受けたけれど…
2022年1月、都内在住の女性は、娘(当時4歳)が通っている保育園で「発達障害の疑いがある」と指摘され、2カ月後の予約がとれた都内の小児科クリニックの「発達相談外来」を受診。医師からは「このくらいの年齢なら落ち着きがなかったり、言うことが聞けなかったりするのはよくあること」「お母さんは気にしすぎ」「しばらく様子を見てそれでも気になるようならまた連絡して」などと言われ、15分ほどで診察が終了した。女性は当時のことをこう振り返る。
「初診待ちが最も短いという理由でこのクリニックに行きましたが、発達障害に詳しい医師には見えませんでした」
不安が募り、4カ月後の予約がとれた小児医療センターを受診。検査など複数回の診察を経てADHD(注意欠如・多動症)と診断されたという。
一方、22年6月に当時小学1年生の息子の発達障害を指摘された神奈川県在住の女性は、2週間後の予約がとれたメンタルクリニックの「児童精神外来」を受診した。医師は女性に向かってチェックリスクの質問事項を次々読みあげてあてはまるかどうか尋ね、すぐに「ASD(自閉スペクトラム症)だね」と診断した。女性は言う。
「次男は普通に会話ができますが、先生が次男に話しかけることはほとんどありませんでした。質問も『マイペースですか?』とか『こだわりが強いですか?』など、どちらともいえないものが多く、『え、これだけで決めちゃうの?』と、びっくりしました」