1年時から選手権の舞台で活躍して高校サッカー界の“キング”となった松木は、FC東京で高卒1年目から物怖じしないプレーぶりでレギュラーとして活躍。2年目の今季も主力として働き、U-20W杯にも出場。中断明けの8月6日のC大阪戦では待望の今季初ゴールを決めた。テクニック溢れるドリブルで注目を集めた古川も1年目からJのピッチに立ち、磐田の切り札として存在感を高めている。そしてチェイス・アンリはJリーグではなくドイツ・シュツットガルトと契約。セカンドチームでプレーし、U-20W杯ではしっかりと成長した姿を披露した。同じく佐野も高い技術のMFとしてU-20W杯で能力の高さを示し、J2岡山では不動のレギュラーとして活躍中だ。ドリブラーの永長は川崎からJ2水戸へレンタル移籍して出番を増やしている。
そして記憶に新しい2022年の選手権の決勝は、岡山学芸館が3対1で東山に勝利し、大会優秀選手に選ばれた3年生には、阪田澪哉(東山)、大迫塁(神村学園)、森重陽介(日大藤沢)、名願斗哉(履正社)、福田師王(神村学園)らがいた。
攻撃的アタッカーの阪田と大迫はC大阪で鍛錬中。センターFWとCBの二刀流で注目された森重は、清水でJデビューを飾り、今夏はスペイン・マジョルカBの練習に参加したことでも注目を集めた。独特のリズムでサイドを突破するドリブラーの名願は、川崎入りしてルヴァン杯でデビューし、三笘薫の後継者として期待されている。そして福田は、チャイス・アンリと同じく直接ドイツに渡ってボルシアMGに入団。セカンドチームで得点を量産した後、今夏のプレシーズンキャンプではトップチームでプレーしてゴールもマーク。新シーズンでのブンデスデビューが期待される位置まで評価を高めつつある。
ここに挙げた面々が今後、どのような成長曲線を描くのか。大きな流れで見ると、Jリーグの理念に沿うように、高校サッカーよりもJユースに優秀な人材が集まり、昨年12月のカタールW杯の日本代表では、Jユース出身者が26人中14人を占めて初めて過半数を上回った。だがこの2年、「高校から直接、海外移籍」という“新しい流れ”が生まれており、今後は高校サッカー出身者の“再興”が期待される。現役高校生には、今年のU-17アジア杯で得点王&MVPに輝いた名和田我空(神村学園)がおり、今後も高校サッカー界から将来日の丸を背負う、楽しみなタレントが輩出されていくはずだ。(文・三和直樹)