ダイヤモンド・オンラインの画面。現在はほとんどの記事は金鍵といわれる有料版読者にしか読めないようになっている

 石田が、そうした週刊「ダイヤモンド」の読者が変わってきたことに気がついたのは、2000年代に入ってからだったか。これまでだったらば鉄板の業界の記事が売れなくなり、相続や大学ランキング、出世、年収といった軟派の特集をカバーストーリーにすることが多くなっていたのだ。特に書店売りにその傾向が顕著だった。

 ウエブへの進出は、無料広告モデルの「ダイヤモンド・オンライン」が2007年10月スタートと早い。当時は、こうしたメディアがなかったこともあって、無料広告モデルでも売上は増えていたが、しかし、ここでPVを稼ぐ記事というのは、紙の雑誌とはまったく違った。かつての週刊「ダイヤモンド」が得意としていた経済ジャーナリズムの本道をいくような記事は読まれなかった。

 2010年前後になると、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(2009年)や『嫌われる勇気』(2013年)などのミリオンセラーが、出版で相次いだこともあって、「週刊ダイヤモンドは会社のお荷物」と社内でみられるようになってきた。そうした中で、これまで業界をカバーしてきた40人強の社員記者たちをどうするのかというのは大きな課題だった。

 つまりダイヤモンド社創業の精神的支柱でもあった経済ジャーナリズムをどうするか、という大問題だ。

 週刊ダイヤモンドが生き残る道は、デジタル有料化にしかない、という意見は編集部の中でも根強くあった。が、問題は、紙の編集部とは別に存在するダイヤモンド・オンラインは別の局にあること、そして営業部や広告は、紙の定期購読や書店販売に紐付いていたことだ。

 これは日本の新聞社や他の週刊誌がすべて抱えている問題で、デジタル有料版のローンチはこれら他の部局と利害が衝突する。なのでなかなか話が前に進まない。

 週刊ダイヤモンドの中核を担っていた急進派の三人が、そろって紙をもたない有料デジタルのニュースサイト「NewsPicks」に2016年に移籍したことで、この改革は待ったなしだという衝撃が社内に走った。

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