麻生祐司(左)と山口圭介(右)。麻生は本文では再入社と書いたが実は再々入社。94年から96年まで週刊ダイヤモンドの記者をやったあと、ブルームバーグで短期間働いている。その後ダイヤモンド社に再入社し、ダイヤモンド・オンラインの立ち上げに参加した。山口は、産経新聞で支局・総局勤務のあと、経済ジャーナリズムへの憧れ断ちがたくダイヤモンド社に2008年入社した(撮影/写真映像部・高野楓菜)
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 週刊朝日の休刊で様々な人が様々なことを書いたが、はっきりしているのは、いくつかの例外を除いて紙の定期刊行物は終りの時代を迎えつつある、ということだ。

 多くの週刊誌は(このAERAも)、デジタルでの展開をしているが、記事をただで読ませてPVで広告費をとるという無料広告モデルを採用している。しかしこのモデルでやっているかぎり、紙の落ち込みをウエブではカバーしきれない、というのは新聞と同じだ。その理由はウエブでのPVあたりで支払われる広告費があまりに安いからだ。

 今のところ、唯一の生き残り策と言えるのは、デジタル有料版を成功させることだ。英エコノミスト誌、米ニューヨーカー誌がこのモデルを成功させている。

 日本の週刊誌で有料デジタル版を成功させている今のところ唯一の例と言えるのが週刊ダイヤモンドだ。

 週刊ダイヤモンドの紙の店頭売りの実売は2万2389、定期購読が3万3582。これに対してデジタル有料版は2万9654の契約者がいる(2022年7月~12月期ABC部数)。つまり全読者のうち三分の一がデジタル有料版の読者ということになる。

 週刊ダイヤモンドのデジタル有料版「ダイヤモンド・プレミアム」は、2019年6月にスタートしたが、有料版の成功で、一度は行き場を失っていたダイヤモンド社の経済ジャーナリズムが息を吹き返しつつある。

 ただし、このデジタル有料版のローンチはただ、無料モデルを有料モデルに変えただけではない。無料モデルだったダイヤモンド・オンラインとの統合編集部の誕生や、広告、営業もレポートラインは、このDXを進めた局長に一元化するという組織の大変革があった。

 前後編の二回にわけて、週刊ダイヤモンドの有料デジタル化はいかになったかをお届けすることにしよう。

 全社員の7割が中途入社組に占められるダイヤモンド社において社長の石田哲哉は、1986年に上智大学からダイヤモンド社に入社をした生え抜きだ。ダイヤモンド誌は週刊朝日より約10年早い1913年に創刊されているが、創刊号の巻頭言にこうある。

〈本誌の主義は、算盤の二字を以て尽きます。本誌は是とするも非とするも、総て算盤に拠り、算盤を離れて何物も無い〉

 この創刊号の巻頭言そのままに、週刊ダイヤモンド誌は長く社の旗艦誌として、社員が製造業、金融業、建設業を始めとする各業界を担当する記者として記事を書き、経済ジャーナリズムの一翼をになってきた。

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