「市川さんにお話を伺うと、15歳で奥さんと最初に出会ったときのドキドキが、45年間、毎日繰り返されているそうなんです。それってすごくないですか? 自分も妻をもちろん毎日好きだし、愛してもいるけど、そんなに新鮮な気持ちが持ち続けられるのか?(笑)と。それを現実にしていらっしゃる市川さんは素敵すぎる。その純粋さが伝わればいいなと」
原作でジンは妻を「(自分の)生命維持装置のようなもの」だと例えている。絆の深さに憧憬する半面、一人をそれだけ愛し続けることには、喪失の不安もつきまとうのではないか。
「僕は基本的に前向きな人間なので、ここで描かれる愛に疑問や不安は感じませんでした。一人をそれだけ愛することができたら幸せなことですから。ただやっぱりジンは人よりもかなり繊細で敏感な人。『もしも優美がいなくなったら自分の衰えるスピードがどんどん速くなる』というセリフがありましたが、そういう感覚もおそらく持っていらっしゃる。でも最終的に僕もスタッフも『それでも生きている“ジン”を描きたい』という思いで一致していたと思います。僕自身もジンを『消えそうだけど、絶対に消えない炎』というイメージで受け止めていました」
海外旅行に行けないジンが「妻の人生を犠牲にしているのではないか」「自分が彼女の負担になっているのでは」と葛藤するシーンもある。
「それって障害のあるなしなどに関係なく、誰もが考えることだと思うんです。別に相手はそんなことを思ってないのに、自分のなかで変に解釈して、勝手に相手に申し訳ないと思ってしまったり。でもそういう思いを経験するからこそ、お互いの絆がさらに強いものになったり、自分自身が心も強くなったりしていくのかなとは思います。ジンと優美は、本当に運命の出会いだったんだと思います。うらやましいですね。いや、僕も妻とは運命の出会いだと思っていますけど(笑)」
瀬戸さんは2020年に結婚し、先ごろ妻の第1子妊娠が発表された。