100%きれいにはならない
JPUC加盟業者における標準約款に基づいた契約は98.2%(22年度)に達する。
「カーセブン、ガリバー、ネクステージ、ビッグモーターといった大手買い取り事業者のみなさんは標準約款を採用しています。ですから、国内における買い取り契約においては、われわれの標準約款がほぼ採用されていると、ご理解いただいて結構です」と、JPUCの井上貴之代表理事は説明する。
しかし、実際には悪質な商談や査定額の減額も報告されている。
「そのような場合、消費者からJPUC車売却消費者相談室に電話がかかってきます。すると、うちの事務局は買い取り事業者の本社や本部のコンプライアンス担当に対して、『こういう事例を聞きました』と連絡します。すると、店長などが指導されます」(井上代表理事)
売却トラブルが起きない会社もある一方、「現実問題として、100%きれいにはならない部分はあります。そういうトラブルを少しでもなくすために、われわれは活動しています」(同)。
一刻も早く相談を
では、どうすればトラブルを未然に防げるのか。前出の国民生活センターの神辺さんはこう話す。
「『今日なら高く買い取る』『他社よりも高く買い取る』などと言われ、強引に契約を迫られた場合、まずひと呼吸して、『なぜ強引なのか』を冷静に考えてください。要するに、裏に何かあるのかもしれない。『今回は査定をお願いしただけです』『他の店と査定額を比べます』などと伝えて、その場での契約をきっぱり断りましょう」
1人だと言いくるめられやすいので、複数人で対応するのも有効だという。
先に書いたように、車の売却トラブルではクーリングオフ制度は利用できない。いったん契約すると、原則として契約書の内容に拘束される。なので、契約前にはその内容をしっかりと確認することが重要だ。
契約後に査定額を減額されたり、高額なキャンセル料の支払いを求められたら、一刻も早く消費生活センターに相談しよう。
「消費者問題すべてに言えますが、消費者と業者の間には圧倒的な情報格差があります。なので、1人で抱え込まず、すぐに消費生活センターに相談してください。対応策をお話できたり、場合によっては、警察に、という話も出てくるかもしれません」
契約書にキャンセル料が記載されていても、著しく高い場合は、事業者に生ずる平均的な損害額を超える部分については、消費者契約法第9条1号によって無効となる可能性がある。
「JPUCの標準約款を使っている業者で、負担なくキャンセルが可能だったにもかかわらず、日にちがたってしまい、費用負担が発生してしまうこともあります。なので、何かあった場合には、すぐご相談いただくことが何よりも大切です」
大切な車を売るのだから、トラブル事例と対処法は事前によく知っておきたいところだ。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)