もう1つの要因は高齢者の増加だ。
「免許返納などによって、高齢の方が車を手放す、という状況が見られます」
車の売却トラブルにあった契約当事者の年代は12年度、40代以下は68.4%、60代以上は18.1%だったが、21年度は40代以下が47.6%に減少したのに対して、60代以上は32.1%に増加した。
特に増加が著しいのは70代以上で7.1%から17.9%と、2.5倍にもなっている。この間、免許返納件数は約11万件から約44万件に増加している。
「運転免許証を返納して、使わなくなった車を売却する際にトラブルになってしまう。その子どもが売り主として契約当事者になる場合もあると思われ、50代のトラブル件数も増加しています」
一般の消費者にとって、車の売却は一生のうちに何回もあることではなく、売却金額や手続きの情報などはほとんど持っていない。
「そのため、業者につけ込まれ、言いなりになってしまうのです」と神辺さんは指摘する。
業界団体「減額はあり得ない」
冒頭に紹介したのは、言葉巧みに売却を勧誘したうえ、強引に契約を迫るケースだが、「契約後に査定額を減額される」「高額なキャンセル料を請求される」というのもよくあるトラブルだという。
「昨年1月に受け付けたケースでは、高齢の父親が乗っていた車を子どもが売却しようと思い、査定してもらったところ、50万円という査定額が出た。ところが、契約後、業者から『事故車なので10万円減額する』と言われた。結局、40万円が振り込まれたのですが、『納得できない』とご相談がありました」
神辺さんは「あらかじめ事故歴や修理歴を伝えていれば、業者から後で減額を求められても応じる必要ありません」と言う。
「プロが査定しているわけですから、車を引き渡した後で減額するのはあり得ないと、業界団体である日本自動車購入協会(JPUC、ジェイパック)も言っています。ですが、そういうことを一般の消費者はご存じなかったりします」
車を売却したすぐ後にキャンセルしようとすると、高額なキャンセル料を提示されるのもよくあるトラブルだ。
「JPUCは業界のガイドラインとして『標準約款(自動車買取モデル約款)』をつくっています。ここには、『契約車両の引き渡しを行った翌日までは、買い主に通知することにより何等の負担なく本契約を解除することができるものとする』というキャンセル条項が書かれています」