Sibi George/1967年生まれ、南インド・ケララ州出身。これまでスイス、クウェートなどのインド大使を歴任。インタビューの日は今夏の最高気温を記録した猛暑日。「東京は、インドより暑いと感じる」と笑う(撮影/写真映像部・松永卓也)

 平均年齢27.9歳で、活気にあふれるインド。発展の原動力について、シビ・ジョージ駐日大使が本誌単独インタビューに答えた。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。

【写真】ヴィヴェーカナンダ文化センターでは、ヨガ、ダンスなども

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──目覚ましい経済発展を続けるインド。その原動力に注目が集まる。

 インドは活力に満ちた民主主義国家です。この成長の源となっているのは、インド憲法です。機会の平等、発想や表現、信条、信仰の自由、社会的・経済的自由および政治的公平性といった基本的な権利を国民に約束しています。この憲法を持っていることが我々の強みでしょう。

 インドは世界最大の若者人口を抱えています。平均年齢は27.9歳(日本は2021年10月1日現在48.8歳)。世界の人的資源となり得る若き才能があふれ、国全体に活気があり驚異的な経済成長につながりました。

 いまインドは、世界第5位の経済大国です。2010年以降の10年間、国内総生産(GDP)は年平均で約7%の成長を続けてきました。コロナ禍による落ち込みからの回復も順調で、21年度は9.1%、22年度は7.2%です。

 経済の変革をさらに促進するために、インド政府は数々の重要政策を実施しました。17年に導入された物品と商品の取引を対象に課税する全国統一のサービス税(GST)の他、一般税などにも多くの改革が行われています。

 改善すべき点もまだまだありますが、それは、より成長するためのプロセス。国内の経済がうまく回れば、今後もより高いレベルの成長が続くことは間違いありません。

大使館に隣接するヴィヴェーカナンダ文化センターでは、ヨガ、ヒンディー語、インド映画、ダンスなどの講座を一般向けに開講している(撮影/編集部・古田真梨子)

──現在、米グーグル、マイクロソフトなど世界的企業のトップはインド出身だ。グローバルに活躍する優秀な人材を輩出する教育力も誇る。

 インドは、数学に優れた国であるという一般的な認識があると思いますが、実際にその通りです。幼い頃から、高いレベルの数学スキルを身につけ、才能を磨いていきます。

 また、インド工科大学(IIT)やインド理科大学院(IISc)などは、工学、経営学分野の名門校として知られるようになり、世界のデジタルトランスフォーメーションにおいて中心的な役割を果たしています。その結果、世界のデジタル変革に貢献する人材を送り出すことができ、ここ数年で最も大きなデジタル変革を成し遂げた国となりました。

 インドはITやバイオ科学、宇宙、原子力や人工知能などあらゆる分野の研究を主導するSTEM人材の宝庫です。日本との教育交流は重要な要素です。

 私は、より多くの日本人学生がインドに留学することを願っています。

(構成/編集部・古田真梨子)

AERA 2023年8月7日号より抜粋

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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