――久保さんにとって、育児の喜びとは?

 たとえば公園で遊ぶ娘が、階段から地面にピョンって飛ぼうとするとき、最初は足がほぼ浮いてなくてその場で屈伸するだけだったのに、今では当たり前のようにジャンプして下りてくる。新しいことができるようになる姿を見るのはうれしいですね。

 夕方に台所で大根を切っているときとか、僕の母親やおばあちゃんのことを思い出して、自分を重ねるんです。ああ、きっと二人とも、こういう感じで子どものころの僕を見ていたんだなって。で、娘もきっと、今の僕の姿を覚えていてくれるのかなって思うと、なんだかあったかい気持ちになります。

《兎にも角にも、これから子を持つ読者諸賢には、育児休業の取得を強くお勧めする。可能なら2~3 年の育児休業を追求すべきである。特に、私の仕事を奪いそうな優秀な若手研究者は3 年と言わず30年休むとよい。》

――育休期間もあと半年ほどで終わりますが、今後の予定は?

 妻は仕事があってたぶん日本に帰らないので、子どもはNYに残るのか、僕と日本に帰るのかはまだわかりません。今はボケ防止を兼ねて、できるときに自分のペースで研究を進めていますけど、復帰するとシフトに入ったりミーティングに出たり面倒なことも増えるので、ちょっと憂鬱(ゆううつ)です。夏休みが終わる前、8月15日くらいの小学生の気分ですね(笑)。

(聞き手・構成/AERA dot.編集部・大谷百合絵)