――何かやるべきことはないのでしょうか。

 岸田政権には打つ手はほとんどないと言っていいでしょう。岸田政権だけが悪いのではなく、これまで問題を放置してきた歴代の政権の積み重ねによるものです。

 いずれにしても、政治の力で解決するのは無理ですから、日本円や国債の暴落といった「市場の暴力」に頼るしかないかもしれません。大きなショックによって一度リセットされてから、きちんとした資本主義国家を作るために再び立ち上がる必要がある。

 岸田政権がやれることがあるとすれば、こうしたショックが起きた時の被害をやわらげるための対策や、リセット後の国家の青写真を考えておくことくらいでしょうか。

――7月27~28日には日銀の金融政策決定会合が予定されています。

 日銀は現状維持か、修正するとしても、長期金利の許容幅を現在の0.5%程度から0.1%引き上げたり、マイナス金利政策を解除したりするような、ほんの「ごまかし」程度のものにとどまるでしょう。

 マイナス金利の解除は、金融緩和の「象徴」といったように大きな政策転換であるかのようにみなされていますが、経済的な影響はほとんど期待できない。

 マイナス金利が適用されているのは、金融機関が日銀に預けている当座預金500兆円弱のうちの30兆円前後とごくわずかです。

 しかし、「解除」という言葉が使われれば、大きなインパクトを与える印象を受けます。こうした国民の誤解を利用して、あたかも大きな政策修正を行ったようにみせかけることができるかもしれません。

 金利を少しでも上げただけで、地銀や日銀自身が保有する国債の含み損が膨らんでしまいます。債務超過に陥る恐れもある。ですから、かりにマイナス金利政策を解除したとしても、金利の引き上げ余地はごく限られています。

 ですから、今回の会合では何もせずに口先のアナウンスだけにとどめるか、ごまかし程度の小幅な修正にとどまると予想しています。実質的には、何もできないと思います。

(AERA.dot. 編集部・池田正史)

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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