藤巻健史さん

――どうしてそうなってしまったのでしょうか。

 最大の要因は、日本が異常に社会主義的な経済運営をしてきたことです。規制が多く、「結果平等」の税制を持つ「大きな政府」を指向してきました。

 この国では何から何まで「格差是正」が金科玉条に掲げられていると感じます。格差は是正しなければ、当然、問題です。しかし、是正しすぎても問題が生じます。

 汗をかいた人がきちんと報われなければ誰も働かなくなってしまう。正当な報酬がなければ優秀な人達にはそっぽを向かれてしまいます。日本では頑張ってお金持ちになった人を引きずり降ろそうとする風潮もあります。

 社会主義が資本主義に負けるのは歴史の必然です。日本の成長率が長年低くとどまっているということは、社会主義的な経済運営に問題があることを示しているようなものです。

――その結果、財政も悪化した。

 低成長であれば税収もそれに見合ったものにとどまります。ところが、日本では格差是正を金科玉条に掲げすぎるあまり、医療や介護といった社会保障など再分配政策ばかりにお金が回ってしまっています。しかも、身の丈を超えた額が毎年分配されています。

 つまり、税収が低いにもかかわらず、「大きな政府」をめざしているのです。

 そのため国の借金は税金では返せないレベルにまで達してしまいました。通常の国なら破綻してもおかしくはない水準です。

 そこで延命を図るために行ったのが、日銀の異次元緩和です。税収では国の財政を賄えないから、日銀が発行する新たなお金で賄うことにしたのです。でも、その歯止めがなかったせいで日銀のバランスシートは大きく膨らんでしまいました。

 確かに、日銀はいくらでもお金を刷ることはできますが、お金は供給されればされるほど、その価値は下がります。日本でのお金とは円のことですから、円安が進行し、当然、今までのように外国からモノやサービスを買えなくなる。

 要するに、みんなで平等に貧乏になる道を突き進んでいるのです。今のままでは経済や財政の運営は行き詰まり、大増税か、借金の踏み倒しと同じハイパーインフレに行き着くしかないでしょう。

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「市場の暴力」に頼るしかない