岸田文雄首相
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 日本の経済は低成長が続き、停滞感からなかなか抜け出せずにいる。岸田文雄政権は経済政策に多額のお金を投じるが、借金は膨らむばかりで生活がよくなる実感がわかない。経済評論家の藤巻健史さんは、政府の手には負えない状況に追い込まれてしまっているという。

【写真】「打つ手ない」と藤巻健史氏

―― 岸田政権の経済政策の課題は。

 最もおかしな点は、本来、インフレを抑えなければならないはずなのに、ばらまき政策を続けていることです。

 現在、ガソリン代や電気代、ガス代の値上がりを抑えるために、補助金を出しています。もともと経済の論理から言えば、モノやサービスは値上がりすれば、おのずとその需要は抑えられるものです。しかし岸田政権は、値上がりを抑えることで需要を増やしてしまっています。

 明らかに経済の原理に逆行しています。もちろん、生活困窮者へのセーフティーネットは用意すべきですが、岸田政権は国民全員に対して広く、薄く補助金をばらまいています。

 これでは、物価の値上がりを加速させるばかりでなく、本当に助けが必要な人達に十分な恩恵も行き届かない。インフレをとめられなければ、国民はもっと苦しむことになります。

 ただし、これはあくまで細かな点にすぎません。根本的には、日本の経済や財政はもはや「どうすべきか」という次元はすでに超え、「時すでに遅し」の状況に陥っている。

――どういうことでしょうか。

 まず、経済は40年間、世界で断トツの低成長が続いています。この間、国内総生産(GDP)は2倍にもなっていません。ほかの国は数倍、数十倍、中国に至っては200倍以上になっているのに情けない話です。

 加えて、財政赤字もGDP比260%超と世界最悪の状況にあります。日銀も資産が膨らみ、世界一のメタボな状態に陥ってしまっています。

 この状況はある意味で「詰んで」いて、私は一度リセットして再出発をせざるを得ないと考えています。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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