“基本”は
その人のライフプラン次第


 では、あれこれ考えずに支給開始年齢の65歳から受け取るのが一番無難かと言えば、必ずしもそういうわけではない。どんな受け取り方がベストかというのは、60歳以降のその人の生き方、すなわちライフプランによる、というのが最も正しい答えだ。

 これだけだと抽象的なので、もう少し具体的に考えてみよう。

 そもそも収入というのは、現役時代と退職後ではまったく異なる。会社員であれば恐らくほとんどの人は現役時代、給与収入しかなかったはずだから、とてもシンプルだ。

 ところが定年になった後の収入はかなりバリエーションがある。最もベースになるのは、ここで取り上げている(1)公的年金だが、60歳以降も働く人が7割以上いる現在では(2)勤労収入というのも大きな要素である。

 さらに言えば、(3)企業年金も大切な収入であるし、退職金を含め、自分で蓄えた金融資産から生み出される(4)資産所得(金融商品から得られる利息、配当、値上がり益など)も老後の生活をまかなう収入の一つとなるだろう。

 このように考えていくと、老後の収入もかなり多様な手段がある。その中でも確実に死ぬまで入ってくる収入は、多くの人の場合(1)公的年金だけである。(2)勤労収入は、いつまで働くかによって違ってくるからだ。(3)企業年金もほとんどは有期なので死ぬまでもらえるわけではないし、そもそも企業年金のない会社の方がはるかに多い。そして(4)資産所得は、運用による収益であるため不確実だ。そして使えばなくなってしまう。

 したがって、公的年金の受け取り方を決めるポイントは、

(1)何歳まで働くつもりか?
(2)退職金や企業年金があるか? あるとすれば何歳から何歳まで受給できるのか?
(3)自分の金融資産がどれくらいあるか?

 といった要因をまず考えるべきである。

 60歳以降、一切働くつもりがないのであれば、公的年金支給開始の65歳までの生活をどうまかなうかを考える必要がある。もし、老後の収入を増やすために公的年金の受給を70歳とかに繰り下げるのであれば、その間の生活費も必要になってくる。

 場合によっては、減額を覚悟で60歳から年金を受け取るという方法もある。

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公的年金は、パズルのピース