(写真はイメージ/Gettyimages)
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「何歳から年金を受け取るのが得か」は
意味のない質問


 昨年4月から公的年金の受給開始年齢の選択肢が広がった。通常、年金の支給開始年齢は65歳からだが、これは支給する側からの話で、受給すなわち受け取る側が受け取りを開始する場合の選択肢は必ずしも65歳でなくてもよい。60歳から75歳までの15年間の間、いつでも自分の好きな時に受け取り始めていいのだ。

 ただ、こういうルールの改正があると、メディアの人たちの多くはこういうことを聞いてくる。それは「何歳から受け取るのが一番お得ですか?」という質問だ。

 気持ちはわからないでもないが、これはまったく意味のない質問である。

 そもそも公的年金というのは保険だ。自分が将来働けなくなり、収入が途絶えた時の生活をまかなうための手段として国が死ぬまで支給するという保険制度なのだ。だから年金を受け取り始める65歳以前に亡くなってしまうと、ずっと保険料を払っていたにもかかわらず、本人は一円も受け取れない。だが、逆に100歳を超えて何歳まで生きていてもずっと年金は支給される。

 つまり年金は言わば長生き保険であり、もし損得を言うのであれば長生きすればするほど得になるということだ。

 自分が何歳で亡くなるかがわかっていれば計算は簡単だが、そんなことは誰にもわからない。したがって、「何歳から受け取るのが一番得か?」という質問はまったく意味がないのである。

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「65歳から受け取るのが一番無難」とも限らない