万博協会の副会長で関西経済連合会の松本正義会長は7月18日の記者会見で、

「(現時点で)設計もない、何のレスポンス(反応)もない、そういう国が56カ国の中にある。撤退する国も出てくると思う」

 などと述べた。

 大阪府の吉村洋文知事もパビリオンなどの建設について、

「かなりタイトな時期になっており、できるだけ早くしなければならない。あらゆる方策をとっていきたい。協会が主体となって、当然、国も(海外の参加国に)働きかけをしている。5月には(岸田文雄)総理にも、問題意識を共有してほしいと伝えました」

 と岸田首相にスケジュールが厳しいとして、協力を求めたことを明らかにした。

 現在、現場で工事にかかわっている業者に聞くと、

「もとはゴミの埋め立て地だから、想定以上に軟弱な地盤です。雨の日が続くと長靴で歩くのも大変なほどですから、工事の進捗(しんちょく)も予定通りにはいきません。さらに夢洲は海の上ですから、台風などの悪天候に見舞われれば工事も止めざるを得ない。1年半ほどでやってくる開幕には、とてもじゃないが間に合わないのでは」

 とまだ何も建っていない広大な埋め立て地を背にそう話した。

万博が開かれる夢洲の工事現場
万博が開かれる夢洲の工事現場

■「無理なら早めの延期を」

 ある大阪府の幹部がこう打ち明ける。

「ここ2、3カ月で『万博は1年ほど延期すべきではないか』という話が内輪で出るようになりました。ドバイ万博もコロナの影響を理由に半年先延ばしになりました。大阪もコロナを理由にすれば延期できるんじゃないかという人もいる。東京オリンピック・パラリンピックも1年延期でしたからね」

 つまり、「延期論」が庁内でもささやかれ始めているということらしい。

 一方で吉村知事は、

「開幕を遅らせることは毛頭、思っていない。国も思っていない」

 とはっきり否定した。

 肝心のパビリオンの建設遅れに、入場料が当初の4800円から7500円と高くなるなど、ごたごたが続く。

「本当なら国の威信をかけた日本館も、海外のパビリオンも、建設が始まっていないとだめな時期。無理なら早めに延期を求めないと日本の信用にもかかわる。ただ、もうコロナは理由にできないんじゃないか」

 とは自民党の幹部。

「延期論」が現実味を増す?

(AERA dot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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