「覚醒したのかは、まだわからない。阪神時代は素晴らしい投球をしたかと思えば、急にストライクが入らなくなる。投球が抜けるクセが治らず右打者にぶつけることも多かった。体に染みついた投球の癖はすぐに治るとは考えにくい」(阪神担当記者)

 藤浪の“真価”が問われるのはこれからだが、相手打者を圧倒する投球を時折見せたことで、ア・リーグ東地区で首位を走るオリオールズの目に留まった。オールスター前後の好投もあり、8月1日のトレード期限を前に「市場価値が上昇中」という報道の通り、世界一を目指すチームに迎えられることとなった。

年俸325万ドル(約4億5000万円)はメジャー全体では格安で直近の活躍を見れば魅力的。しかしトータルで考えれば防御率8点台の投手で、各球団編成部は日本時代の悪かった時代も全て把握している。ダメ元で獲得に動くチームがあるかどうかとは思っていましたが……」(MLBアジア地区担当スカウト)

 アスレチックスにとっては、藤浪との交換で数年先の柱になれる選手を獲得できれば願ったり。チームは本拠地移転が決定的で、現在は“勝ちモード”とは程遠い。徹底的なコストカットを図り、ラスベガス移転後の再出発に向けて舵を切っている。

「代理人スコット・ボラス氏の手腕にも改めて驚嘆する。移転問題を含めたチーム事情を踏まえ、藤浪の契約をまとめたと考えられる。誰もが損をしないハッピーな契約だったということ」(スポーツマネージメント会社関係者)

 藤浪の年俸は325万ドルで、阪神時代の年俸4900万円から大幅アップとなった。とはいえ、藤浪の年俸は2022年のメジャー全体の平均422万ドル(約5億9000万円)よりも安価。アスレチックスはその額で契約した選手との見返りに、移転に向けた選手をトレードで獲得できれば言うことはないだろう。

「アスレチックスは近い将来の移籍を見据えて藤浪と契約した可能性は高い。シーズン中のトレードがまとまらなくても単年契約なので、今季限りでリリースもできるという状況だった。ビジネスに特化した動きが奏功した」(スポーツマネージメント会社関係者)

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移籍はチャンスでもあるが……