榊原記念病院院長の磯部光章医師
撮影/上田泰世(写真映像部)
榊原記念病院院長の磯部光章医師撮影/上田泰世(写真映像部)
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心臓疾患診療をリードし、心臓手術数で成人と小児を合わせると全国トップクラスの榊原記念病院(東京都府中市)。東京医科歯科大学医学部循環器内科教授だった磯部光章医師が2017年に院長になり、経営改革により収支はV字回復し、21、22年度は開院以来過去最高収益を果たした。磯部医師は、心疾患の最先端医療と地域密着の医療を両立することを目指しているという。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院』編集チームが、磯部医師に取材した。前編に続いて、後編をお届けする。

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 磯部医師が具体的な改革に着手するにあたって最初におこなったのは、同院の強みと弱みを把握したことだという。

「もともとこの病院には、医師をはじめ、看護師、コメディカル、そして事務職員に至るまでプロフェッショナル意識や個々の能力が高く、チーム医療も充実していました。診療件数も多く、よりよい医療、最高の医療を提供するというプライド、向上心も強みです。ただ、コスト感覚を持たない人が多かったのです。たとえば、価格にかかわらず高額な機材や薬剤を使用するなどといったことです。ほかにも診療の質の向上に関する方向性が必ずしも一致しないところが多々ありました」

 医師をはじめとする職員のコスト感覚の欠如と行き過ぎた患者尊重を適正にした。後者について言えば、看護部は安全を保つためと救急を断らないためには病床の稼働が少ないほうがよい、という固定した意識を持っていた。

「私は、医療材料の業者さんに集まってもらい、よりよい診療をするために価格についてご協力いただきたいということを話しました」

 医師のコスト感覚もしっかりしてきて、優れていると思ったら高額なものを何でも使うというのではなく、共同で物品を使用することや価格的に適切な選択をするようになった。強大な医師の裁量権にチャレンジしたといえる。

■心疾患の最先端医療と地域密着の医療を両立する

 同院は、東京都の地域医療支援病院、災害拠点連携病院でもある。また循環器関連の救急患者は、近隣からの搬送が多い傾向にある。

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両立が難しいとされる心疾患の最先端医療と地域密着の医療