「自分はそれを打ち返すことしかできない。誰かが用意したことにカウンターを当てることでしか、この世界に存在を見いだせていない。自分には芯がないという劣等感が強かった」
面白いツッコミで番組の空気をさらう共演者への妬み。邪険な扱いをしてきたスタッフへの恨み。ネガティブ感情を「反省ノート」に書きつづっては、気持ちを燃やしてきた。
「妬み嫉みもなく何も考えずに生きていたほうがもっとラクだっただろうし、楽しいこともいっぱいあったと思います。でも、その息苦しさのおかげで頑張れていることのほうが多い」
ネガティブの先に見つけたのは、「受け」のポジション。どんなにとっぴな言動をする相手であっても、その人の魅力を最大限に引き出す存在。それが、持ち味の一つになっている。
■頭にこびりついた不安
2003年のコンビ結成翌年、お笑い界最大の賞レース「M-1グランプリ」で準優勝した。以来、テレビはもちろん、舞台やラジオなどさまざまなフィールドで引っ張りだこになった。
浮き沈みの激しい芸能界で、20年間活躍を続けられているのは、「人間としてのネガティブ」があったから。
何をやっても満足できず、その先にある不安が頭にこびりついて離れない性格。M-1準優勝時には、周りがちやほやしてくれるほどに「てんぐになってはいけない」と自分に言い聞かせた。こんな勢いは長くは続かない。どうせすぐに見放される。活躍の裏側で不安に駆られ、努力し続けた。
その後、相方と10年口をきかない「不仲時代」も経験する。それを乗り越え、19年にその相方のおかげで出会った俳優・蒼井優さんと結婚。昨夏、父親になった。この春には朝の情報番組のMCにも抜てきされた。
だが、「ここからが一番しんどい時期」だと言われている。忠告の主は、M-1準優勝時に「山ちゃんの50歳までのプラン」を描いた初代マネジャーの片山勝三さん。山里さんの才能に惚れ込み、「いずれ政治経済も語れる位置を目指せる」と今の活躍を予見した人物でもある。