常に歩くことばかり考えて手に入れたもの(イラスト:サヲリブラウン)
常に歩くことばかり考えて手に入れたもの(イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 ついに、ウォーキングシューズに手を出しました! 実際に入れたのは足ですが。

 1日1万歩ウォーキング、梅雨時期なこともあり毎日必達とはいきませんが、続いております。1週間で6万5千歩くらいはイケてるのではなかろうか。

 今日がダメなら明日カバーの精神は、しがない小売業経験者の悲哀とでも言いましょうか。1日1万歩が「予算」みたいな感覚なんです。今日の予算を達成するには、ここでこれくらい歩いておかないと、と常に歩くことばかり考えています。以前はどうやって歩かずに済むかばかり考えていたというのに。タクシー代がぐっと減りました。

 と同時に、ちょっとやりすぎだなと思うことも。先日、しっかり歩いて帰宅した夜のこと。時計を見ると、午前0時まであと10分でした。しかし、歩数計を見ると9600歩。やばい、400歩足りない。予算達成できない!

 帰宅したばかりだというのに、私は歩数計アプリ内蔵のスマホ以外の荷物をすべて玄関に置き、そのまま外へ飛び出しました。あと10分で400歩! 少し遠くのコンビニまで競歩のようなスピードで歩く真剣な顔の中年女こと、わたくし。11時58分に歩数計を見ると、1万200歩ちょい! やった! 予算達成だ!

 帰宅後、満足げで汗だくな自分を玄関の鏡で見て、ちょっとゾッとしました。フフフ。

イラスト:サヲリブラウン
イラスト:サヲリブラウン

 で、話を戻してウォーキングシューズ。整体の先生から薦められた「ホカ オネオネ」というメーカーのボンダイという靴。ソールが厚く、丸っこいシェイプが特徴です。

 約3千歩ずつ歩く分には今までのタウン用スニーカーで問題なかったものの、一気に1万歩を目指すようなときには、ちょっと膝に違和感を持つこともありました。

 しかし、さすがウォーキングシューズです。どれだけ歩いても疲れない! いや、肉体は疲れているのだが足が痛くなることがない。私に限っては。やはり、運動にはちゃんとしたギアを用意するに限る。それだけで、テンションもやや上がります。

 せっかく習慣になってきたウォーキングです。雨に気を削がれ、くじけてはもったいない。己の予算達成欲とウォーキングシューズ効果で、熱中症に十分気を付けながら己をなだめすかし、なんとか夏を乗り越えたい所存です。

 では、原稿も書き終えたしちょっと歩いてきますね。

○じぇーん・すー◆1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中

AERA 2023年7月17日号