はじめてかいたまんがは『ぼくはアシカくん』というギャグまんがです。ノートの1ページを切りとり、8ページの冊子のようにする折り方があるんです。小さいスペースに、コマを割ってオチをつけて、かき上げていた記憶があります。冊子が増えていくのがうれしくて何冊もつくりました。

 まんが家は子どものころから、あこがれの職業でしたが、親に厳しい世界だと言われていたので、「なりたいな、でもなれないな」と思っていました。1人でかいているだけでは、自分の実力もわからず、自分には無理だと思いこんでいました。

――デビューまでの道みちのりを教えていただけますか?

「まんが家になるのは難しくても、絵をかいて生活できるようになりたい」と思い、美術大学に入りました。風景をかくことが好きだったので、アニメの背景をかく会社に入ろうと考え、ひさしぶりにまんがをかきはじめました。背景とキャラクターを同じコマにかくまんがは練習になると思ったんです。

 卒業後は希望どおり、アニメの背景をかく会社に就職できましたが、うまくいかずに退社しました。子どものころに憧れていたまんが家になりたいという強い気持ちが、心の底にあったのだと思います。退職後はアルバイトをしながら、まんがをかき続けました。同人誌用にかいたストーリーまんがを「月刊COMICリュウ」(徳間書店)へ投稿したところ、賞をいただくことができ、2011年に24歳でデビューできました(当時は本名で活動)。自分のまんがを認めてもらえたことで、はじめて「まんが家になろう」と思えました。

Twitterに掲載している『はぐちさん』の4コマまんが。「かわいい!」「ほっこり笑って癒される」と話題 (C)くらっぺ
Twitterに掲載している『はぐちさん』の4コマまんが。「かわいい!」「ほっこり笑って癒される」と話題 (C)くらっぺ

――4コマまんが『はぐちさん』はTwitterからスタートしたのですよね?

 そうなんです。『はぐちさん』はTwitterでスタートしました。デビュー後に、はじめての連載を終えたあと、じつは少しなやんでいた時期がありました。「何か行動に移さなければ」と思い、Twitterに絵を投稿しはじめたんです。行動すると見えてくることがありました。時間をかけてかきこんだ絵より、4コマまんがの『はぐちさん』のように、ササッとかいた絵のほうが、フォロワーさんの反応がよかったのです。これは当時の自分にはとても意外なことでした。

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「必要とされるものを提供することが大切」と実感