外国為替市場で円安・ドル高が進んできた。ドル・円相場は6月30日に約7カ月半ぶりに一時1ドル=145円台をつけた。7月11日17時現在、同140円台半ばで推移するが、なお円安・ドル高の流れは続くとの見方は根強い。
政府・日銀が昨年、為替介入を行った1ドル=145円台の水準に近づくと介入への観測も高まる。円安はこの先どこまで進むか。為替介入の可能性は。市場関係者に聞いた。
円安・ドル高の背景に、日本とほかの主要国との金融政策の違いがあることが大きい。今春就任した日銀の植田和男総裁は、緩和を続ける姿勢をたびたび示している。一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)は6月の会合で決めた利上げの停止について複数の参加者から異論が出ていたことが判明。米労働省が7月7日に発表した雇用統計も、景気動向を反映しやすい非農業部門の就業者数こそ市場予想を下回ったとはいえ失業率は改善するなど、なお雇用情勢が底堅さを保っていることが確認された。物価高が収まる気配はなかなかみえず、再び利上げに転じる可能性まで取りざたされる。
JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長、佐々木融さんは言う。
「国内の物価も値上がりしているとはいえ、日銀の緩和姿勢はしばらく続くとみています。政策の修正を行うにしても、長期金利を低く抑え込む『イールドカーブ・コントロール(YCC)は可能だとして、政策金利の引き上げにまで踏み込むのは容易ではありません。これに対し、FRBが利上げの打ち止めや利下げに転じるとの観測は後退しつつあります。日米の金利差は縮まらず、円が弱く、ドルが強い状況は継続すると考えています」
佐々木さんは、今年末までには今よりも円安・ドル高は進み、1ドル=152円をつけると予想する。
一方で、円安・ドル高の流れには一定の歯止めがかかると予想する市場関係者もある。
1ドル=145円台後半や同151円台後半といった節目を超えて円安が進めば、政府・日銀が為替介入を実施する可能性が高まると考えられるためだ。