■決定する過程を可視化
即断即決がリーダーシップの証というわけではない。ただ、自分の殻に閉じこもってしまうと迷走しがちになる。このため、西村さんは意思決定の過程を可視化することで周囲との調和を図っている。
「社内チャットで自分が考えていることをリアルタイムでぽんぽん発信し、社内共有しています。その都度、フィードバックをもらいながら、客観的な意見を採り入れて決断している過程を可視化する狙いもあります」(同)
内向型だという自覚があるからこそ、意識的に弱みを補完しているのだ。そんな西村さんが人事で心掛けているのは「対極を意識した環境づくり」。外交的な性格の共同創業者には今も、アドバイザーとして経営に関与してもらい、人事や渉外部門のリーダーもぐいぐい引っ張るタイプの人材を配置している。西村さんは言う。
「自分では考えつかない意見を常にキャッチできる環境作りに腐心し、特定の価値観や考えに会社の方針が偏らないようバランスを取っています。これが自分だけでは打破できない局面を突破する力になっています」
一方でこうも言う。
「内向的、社交的というのは人間の表層的な面に過ぎない気もしています。結局、深い部分で思慮深さを兼ね備えている人を見極め、そういう人たちに支えてもらって今の自分があると感じています」
西村さんは、内向型がネガティブ視されている社会を変えたいと考えている。
「内向型はネガティブではありません。思慮深かったり、自分のペースで仕事に打ち込めたりするのは強みです。問題はそうした人たちの力を生かせる職場環境や社会構造になっていないこと。それを変えていくのが、僕が会社経営を続けるモチベーションにもなっています」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年7月17日号に加筆