今回初めて成人病棟に入院して快適に過ごしている17歳の長女。小児病棟以上の環境はないと思い込んでいましたが、病棟全体で私たちとコミュニケーションをとってくれたおかげで、安心しておまかせできます(撮影/江利川ちひろ)
今回初めて成人病棟に入院して快適に過ごしている17歳の長女。小児病棟以上の環境はないと思い込んでいましたが、病棟全体で私たちとコミュニケーションをとってくれたおかげで、安心しておまかせできます(撮影/江利川ちひろ)

「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

* * *

 7月になりました。医療的ケアが必要な17歳の長女は、この原稿を書いている7月上旬、人工呼吸器の機種を変更するために入院しています。

 ここのところとても体調が良かったので、入院は2年半ぶりなのですが、その間に長女は小児科を卒業する年齢になってしまい、初の成人病棟です。病棟ではとても良くしてもらい、長女は快適に入院生活を送っていますが、入院の予約時には戸惑うこともあり移行期の難しさも実感しています。

 今回は、小児科から成人科への移行について書いてみようと思います。

■小児病棟に入院できない

 現在、長女が入院している病院は、双子の長女と次女を出産した場所です。当時は病院から車で2~3分の距離に住んでおり、何かあればすぐに受診できる環境でした。

 早産児は感染症に弱く、特に5~6歳までは頻繁に発熱して受診していたため、小児科のドクターも看護師さんも顔見知りばかりでした。

 さらにこの病院は地域の基幹病院でもあり、長女のような医療的ケアが必要なお子さんも多く、小児病棟の看護師さんは胃ろうからの注入や人工呼吸器の扱いにも慣れていて、安心してお任せしていました。

 ところが、今回から小児病棟への入院ができなくなってしまいました。まだ専門外来は小児科に通っており、入院中の主治医も小児科が担当するとのことでしたが、どうやら制度の都合で15歳で区切られてしまうようです。赤ちゃんの頃からかわいがってもらっていた師長や保育士さんに会えないことがとても残念でしたが、今後、体調不良で入院が必要になった時にもこの病院を利用するので、元気な時に成人病棟を経験しておくのが良いように思いました。

著者プロフィールを見る
江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

江利川ちひろの記事一覧はこちら
次のページ
小児病棟ではOKでも成人病棟ではNGなこと