■イヤホンが使えない長女

 今回は予定入院だったため、6月の定期受診の帰りに、地域連携室で長女の日常のようすを看護師さんに伝える面談から始まりました。

 担当の看護師さんは丁寧に聞き取りを行って下さったのですが、長女の生活に欠かせない「おかあさんといっしょ」のDVDやCDを病室で流すことができないと言われてしまいました。

「4人部屋なので、イヤホンをしてもらわないと音は出せないんです」

「イヤホンはコードをかじってしまうのです。おかあさんといっしょの音楽がないと、大声を出してしまうのですが、どうすれば良いでしょうか?」

「うーん、あとは個室ですかね」

「有料…ですよね?」

 長女が安心して入院するためには個室でも仕方ない気がしたものの、今回は数泊なので大きな金額にはなりませんが、もし1週間以上の入院が必要になったらつらいです。小児病棟では、病室内でゲームをしたりDVDを見ているお子さんが多く、長女も当然のように枕元にポータブルプレーヤーを置いて使っていましたが、確かに成人病棟で音楽を流しっぱなしにするのが難しいことも理解できます。これが今回の入院で最も困ったことでした。

■看護師の一言に安心

 結局、認知症の患者さんと同じような配慮として、病棟内の個室を利用させてもらえることになったのですが、病室の空き状況から、人工呼吸器の取り扱いに慣れている呼吸器内科ではなく、消化器外科に入院することになりました。重心児(重症心身障害児)のケアや人工呼吸器の扱いが初めての看護師さんも多いとのことでしたが、そのまま入院の予約をして帰宅しました。

 入院当日、少し重い気持ちで受け付けを済ませて病棟へ上がると、師長さんが笑顔で出迎えてくれました。

「今回、小児科を卒業されて初めての成人病棟とお聞きしています。ご不安ですよね? 何でも言って下さいね」

 この一言に本当に安心しました。どの看護師さんも長女に優しく話しかけてくれ、長女は着替えるとすぐにDVD を見始め、とてもくつろいでいました。看護師さんが自宅での介護の仕方や希望を聞いてくれたため、私の中の不安はどんどん減っていき、病棟の方針に合わせてお任せすることにしました。

 相手の状況が分からないから不安というのは、家族も受け入れる側の病棟も同じですね。小児科とは病棟内の雰囲気も看護師さんの人数も違い、さらに重心児に不慣れだと聞き、どんな入院になるのかとても心配でしたが、病棟全体で前向きにコミュニケーションをとってくれたおかげで、初の成人病棟の入院は問題なく終わりそうです。

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