歌舞伎に詳しい著述家の米原範彦氏も厳しい見解を示す。
「今回の逮捕劇は、政治の世界にたとえれば、現役閣僚や総理に近い大物政治家が逮捕されたようなものです。そうなれば内閣支持率が低下するのと同じように、歌舞伎に対する見方そのものが否定的になってしまう可能性があります」
猿之助容疑者の逮捕が“歌舞伎離れ”の引き金となってしまうのか。
これまで、同じように逮捕された有名役者はいるだろうか。前出の山本氏はこう話す。
「昔、役者が酔っぱらってタクシーの運転手を殴った事件はあったけれど、こういう事件での逮捕は聞いたことがありません。おそらく、家庭内では介護の問題があったんでしょう。父親(段四郎さん)の体調が悪く、母親(延子さん)に介護疲れがあったのかもしれない。その中で、猿之助は一人息子として溺愛されてきた。家族3人の中でいろいろと煮詰まっていたものはあったのでしょう。女性週刊誌のセクハラ疑惑記事は、引き金のひとつだったのかもしれません」
今後の猿之助容疑者の処遇について、元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士はこう話す。
「自殺ほう助はいろんな事情が絡んでくるので難しいが、検察側の求刑は3~4年くらいにはなるかもしれない。人が死んでいるのだから実刑もありうる。父親が死亡した件で再逮捕があるかもしれないが、証拠隠滅は考えにくいので、そう長く拘留されることはないと思います」
松竹は公式サイトで「改めて深くお詫び申し上げます」と謝罪しつつ、「本件が猿之助の家族内の事件であることにも鑑み、司法による最終的な判断がなされるまでは、会社としての見解について申し上げることは差し控えさせていただき、今後の捜査等を見守りたいと存じます」とした。
歌舞伎界を襲った激震は、しばらく収まりそうにない。
(AERA dot.編集部・上田耕司、大谷百合絵)