写真はイメージです(GettyImages)
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 実は、専門家による学会は、卵子凍結は基本的に「推奨しない」という姿勢だ。日本生殖医学会は「推奨するものではないが、妊娠・分娩をするかしないか、その時期をいつにするかは、あくまでも当事者の選択に委ねられる事項」というガイドラインを提示。日本産科婦人科学会の専門委員会は2015年、「推奨しない」という見解を示している。

「卵子凍結は、メリット、デメリット、リスクをしっかり理解した上で選択することが必要。とりあえずという軽い気持ちで臨まないで」

 こう話すのは、生殖医療に詳しい、東邦大学医療センター大森病院産婦人科の片桐由起子教授だ。将来の妊娠するチャンスを残すことにはなるが、母体の高齢出産に伴うリスクはかわらない。出産してからの子育ての長い時間を踏まえても「凍結すれば安心というわけではなく、計画を決めて取り組むことが必要」と警鐘を鳴らす。

■日米で異なる不妊治療を受ける人の年齢

 実は日本は、不妊治療の医療水準が世界でもトップクラスと言われ、体外受精の実施数が世界一多い国でもある。ところが出生率は決して高いとは言えず、生殖補助医療の国際調査(2016年、国際生殖補助医療監視委員会)によれば、日本の順位は世界60カ国・地域で、採卵1回あたりの出生率が何と最下位。年間およそ45万件と多くの人が体外受精に臨むのに、なぜ出生率に結びつかないのか。

 その大きな要因の一つに、日本は不妊治療を開始する患者の年齢が、諸外国に比べて高いことがある。米国における不妊治療を行う患者の年齢構成と、日本のそれとを比較した調査(2022年、ニッセイ総合研究所「米国の不妊治療の現状とは?」レポート)によると、治療効果が期待しやすい35歳未満の治療者が、米国と比べて12.2%低い。また妊孕性が低くなる40歳以上の治療者は、米国と比べて11.9%高いことが示され、治療者の年齢構成が出生率の低さに影響していることが指摘されている。

 日本では妊娠・出産についての教育が進んでいない側面もあり、芸能人のニュースなどを見て、「40代でも出産できるのでは」と思ってしまう人も少なくはない。そして「産みたいのに産めない」という状況になって初めて、自分の生殖機能の現実と向き合うことになるのだ。

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