――それで怖くなくなったんですか?
いや、怖かったですけど、批判を恐れてごまかそうとするのは卑怯だと気が付いた。
――なるほど。大学は東京女子大学だったんですね。
はい、社会学科でした。私は高校時代はいろいろもがいていて、勉強自体は好きだったんですけど、試験で点をとるための勉強はしないと突っ張っていた。つまらないと思った授業はさぼって、図書室に行って好きなことを勉強する、扱いにくい生徒でした。そんなふうだったので大学受験では第1志望も第2志望も見事に落ちました。
東女の1年生のときは東大と合同の合唱団にハマって、歌ばかり歌っていました。2年生になるとき、いろいろ反省もして、思うところもあって、せっかくなら日本で一番といわれる大学の授業を聞いてみようと東大の授業に出てみたんです。片っぱしから出てみた中で唯一面白いと思ったのが経済学でした。
2年生の後半は自分の大学で経済学の授業をとり、ゼミの先生にお薦めの本は何かと聞いて、(経済学の祖である)アダム・スミスの伝記を薦められたので読み始めたんですけど、こういうのを読みたいわけじゃないと思ってすぐにやめた。それで、図書室にある経済学概論とか入門とか、初心者向けっぽいものを持ってきて、そこに書いてある参考文献を全部リストアップした。一番たくさん参考文献として挙がっているものが、きっと良い本なのだろうと考えて、あとはひたすらその本を一人読みふけりました。
わからないときは、前に戻って読み直し、どうしてもわからなければ「何がわからないのか」をノートにメモして進む。これをひたすら繰り返しながら最後まで一応読み、次にそのノートを広げながら、もう一度頭から読み返す。そのときに、前回の自分の質問に自分で答えるようにしながら読むんです。これを3回繰り返して、次の本に進む。そんな、勝手な勉強法でした。
4年生になって、もうちょっと経済学を勉強したいと思い、東大の経済学部への学士入学を考えました。そうしたら、大学院重点化でこの年から修士課程だけの大学院入試ができた。それまでは博士までやる5年コースしかなかったんです。それで、大学院修士課程と学士入学の両方の試験を受けたら、両方受かった。迷ったんですが、大学院に受かったらそっちに行きたくなってしまって、大学院に入学手続きをしました。
入った直後からもう後悔ばかりです。全然ついていけない。学部3年から入り直すべきだったと、この選択だけはずいぶん後まで後悔しました。毎晩10時まで院生室に残って勉強していました。