旧統一教会が2000年ごろ、3千万円で売っていた「聖本」(撮影・米倉昭仁)
旧統一教会が2000年ごろ、3千万円で売っていた「聖本」(撮影・米倉昭仁)
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 まもなく安倍晋三元首相銃撃事件から1年になる。消費者庁によると、事件のあった昨年7月以降、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関する被害相談が急増したが、被害者の多くが高齢の女性という。そして人々の不安をあおり、「献金」を集める役目を担ったのが主婦信者。つまり、被害者も加害者も主婦、という構図が見えてくる。全国霊感商法対策弁護士連絡会の代表世話人である山口広弁護士が監修した著書もあるジャーナリストのいのうえせつこさんは、1980年代からさまざまな新宗教を取材してきた。『女性の自立をはばむもの――「主婦」という生き方と新宗教の家族観』(花伝社)を出版したばかりのいのうえさんに、主婦が旧統一教会の担い手になってきた実態を聞いた。

【写真】怪文書をまかれながらも、旧統一教会の取材を続けたジャーナリスト

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 2020年10月、いのうえさんは東京地裁で行われた裁判を取材した。甲信越地方に暮らす高齢の女性の長女が、営んでいた果樹園や預貯金など総額1億円以上を献金名目で旧統一教会に取り上げられたと母親に代わって訴えたものだ。裁判を担当した山口弁護士によると、「旧統一教会による典型的な献金被害」だという。

 裁判では被害女性から多額の金を教団に献金させた「壮婦(そうふ)」と呼ばれる主婦信者4人が証言台に立った。

 そこで明らかになった献金の手口は、次のようなものだ。

 壮婦たちは言葉巧みに被害女性に近づいて、教団が懇意にしている不動産屋を紹介。果樹園を売却させた金を教団に「預けさせた」。その後、「本人が神様に差し上げたいと言ったから」、「献金」になったという。

 教団の手口もさることながら、いのうえさんの目に焼きついたのは主婦信者の姿だった。

「壮婦たちは疲れ果てているように見えました。化粧っ気のない顔は年齢よりも老けているし、身につけている洋服も貧しいんですよ。山口弁護士の質問でわかったのですけれど、消費者金融を利用しながら活動していた。彼女たちは加害者ですけれど、教団の被害者のようにも映りました」

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主婦たちの「駆け込み寺」だった教団