佳子さま以外の若い女性皇族は、振り袖ではなく、それぞれ個性的な訪問着で参加されたことが印象的だった。
「三笠宮家の長女・彬子さまの訪問着は深い紫地で、雲枠の中に、小花や松竹の葉が朱や緑の刺繍で表されています。匹田(ひった)絞りの地が趣味的で、目を引きました。帯は緑を挿し色にした朱の華文で、大ぶりの珊瑚の帯留が凝った装いです。着物と帯、それぞれ古典的な色柄文様であるにもかかわらず、紫と朱の取り合わせが大胆で、帯留などの小物もあしらわれ、柔らかな色の着物が多い中、鮮明で、ある意味、個性的に感じられました。高円宮家の長女・承子さまは、クリーム色の地にオレンジ系の草花が全体に描かれ、金色の藤の図柄が背景に広がる、華やかな訪問着でした。帯は名物裂の間道(かんとう)。間道とは、室町時代に中国から渡来したしまの裂です。漢渡、漢島、広東とも書き、高級な織物として、茶人の間で大切に保存され伝えられた織物でもあります。ゴージャスな雰囲気で、承子さまに良くお似合いでした。独身の女性皇族でも、一律に振り袖、というのではなく、それぞれ個性を大切にした着物姿に成熟した人間としての魅力を感じます」(青木氏)
それぞれの「らしさ」あふれる着物の競演であったことが振り返られる。
「招待客のスピードスケートの高木美帆さんは総絞の振り袖でしたが、絞りは、布を一つひとつ括るところから始まります。その制作工程には途方もない労力が尽くされています。制作者の心がこもったこの着物を選択して園遊会に臨んだ高木さんの意気込みが、装いから伝わってきます。他の参加者の方々も、それぞれの思いをこめた着物を着用されたことでしょう。大雨でしたが、着物の方々が集ったからこそ、その方々の意気込みとあたたかなエネルギーが伝わってきました。そしてそれを大きく受け止める天皇・皇后両陛下、皇族の皆さまの笑顔が素敵でした」(青木氏)
何より雅子さまが自然体でいらしたのは、あたたかなエネルギーに包まれていたからかもしれない。
(AERA dot.編集部・太田裕子)