「雅子さまの着物は訪問着で、グレーにも見えるごく薄い水色の地で、流水に紫の菖蒲や黄色の菊もしくは蒲公英(たんぽぽ)ともとれる模様。流水に葉と花が立ち上がるデザイン。菖蒲は5月の節句にちなんだお花。菖蒲は長寿のまじない、魔除けとして用いられています。園遊会に集まる方々の長寿を願う、という意味にもとることができます。また、菖蒲は古くから勝負と掛けることもあります。今回オリンピックの選手の方々との会話もありましたが、応援するお気持ちも読み取れます。帯は金に近い銀色。裂(きれ)取りのように、所々に朱や緑などの薄い色味がある、あたたかな印象の帯でした。二重太鼓に結ばれており、帯揚げは白(クリーム色)、帯締めは帯と似たような金銀色で揃えられていました」(青木氏)
園遊会は天皇、皇后両陛下が主催であるが、雅子さまの着物は主催側として、落ち着いていて控えめながらも圧倒的な品格のある、おもてなしの心があふれる着こなしでいらした。
「今回の雅子さまの着物は、5月という季節に合わせた菖蒲が描かれ、まるで庭園の四季の表情を表したかのようでした。2018年11月の秋の園遊会では、紅葉の図柄の着物でしたが、園遊会という戸外での行事の雰囲気に合わせて、自然を感じる図柄を選択されています。自然な雰囲気の中で招待客の皆さまをお迎えされるそのお気遣いが素敵でいらっしゃると改めてと思いました。皇后になられて5年目ですが、自然の風物を表した着物姿に、その会話や笑顔も相まって、皇后としての自然体のお姿から慈愛にあふれた心を見せていただけた思いです」(青木氏)
雅子さまの別格の気品とは違った形で華を添えたのは、園遊会デビューをされた秋篠宮家の次女・佳子さまの振り袖姿だ。
「佳子さまは、振り袖をお召しでした。クリーム色の地に、菊など四季の花々やおめでたい松などが、朱の地の雲取りの中に配置されています。金箔も使われ、豪華な印象です。帯は格式のある華文で、緑色を基調にし、補色の朱が差し色になっていて、古典的な配色ですが、とても若々しいコーディネートです。豪華な振り袖と帯ですが、髪の毛をアップにせず下ろしたヘアスタイルからあまり気張らない親しみやすさを大切にされた感じがしました」(青木氏)