加えて、政府は「電気・ガス価格激変緩和対策」として今年2月~10月請求の燃料費調整額から1kWhあたり7円(10月のみ3.5円)を割り引いている。

 値上がりした基本料金と電力量料金、値下がりした再エネ賦課金、激変緩和措置適用後の燃料費調整額を加味して比べないと実情はわからない。そこで、「4月の託送料金値上げ前」と「6月1日以降の電力量料金値上げ後(燃料費調整額は値上げ後の計算式により算出された7月分)」で、全国の旧電力10社の規制料金を試算した。

■北陸電力48%増の理由

 6月1日から電力量料金を改定した7社で最も小幅な上昇なのは東京電力(7.64%アップ)。最も大幅な上昇となったのは北陸電力だった(48.44%)。なぜ北陸電力だけ突出?

「東日本大震災後の原発停止の際、北陸電力だけは電気料金の値上げを申請しませんでした。水力発電のウェートが高く、原発稼働停止の影響を抑えられたからです」(小笠原さん)

 震災後に改定しなかった分だけ、北陸電力の値上がり率が大きく見えるというわけだ。とはいえ“率”だけ見ると誤解が生じる。値上げ後の“実際の電気代”を見ると、400kWh使用で1万1626円だ。値上がり率18%超の北海道電力より約3千円も安い。

 値上げしない3社のうち中部電力はもともと単価が高めなうえ個人の自由料金比率が高く、企業向け販売も多い。関西電力、九州電力は原発稼働中で火力発電の比率が他社より低い。

 ところで、燃料費調整額の上限も6月から更新されている。たとえば東京電力の関東エリアの上限は「1kWhあたり5.13円から7.89円」(東京電力エナジーパートナー広報)。新電力のこの冬の最高額が12.99円だったことを考えると、新しい上限7.89円はまだ割安に見えるが……。

「燃料費調整額の算出式も最新のものになっているため、上限に達するまでには相応のゆとりがあります。すぐ上限に達して旧電力の“持ち出し”になる可能性は低い」(小笠原さん)

 なお、現在1kWhあたり7円が割り引かれている政府の激変緩和措置だが、10月以降に延長されることはあるのか。「政治的に延長せざるを得ない」という一部報道もあるが、6月29日時点で確定情報は無い。

 真夏や真冬など電力需要が急増する局面で、燃料の争奪戦=価格上昇が発生する可能性は?

「燃料在庫確保の水準目標を定めており、需給逼迫は発生しにくいと見ています。唯一厳しいと言われるのは、供給予備率が3%程度まで低下する東京エリアの7月です」(同)

 まずはこの夏を乗り切らねば。

(金融ジャーナリスト・大西洋平)(編集部・中島晶子)

AERA 2023年7月10日号

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