国が目を光らせる規制料金の場合、燃料費調整額には“上限”が設けられている。どんなに石炭や天然ガスの燃料コストが上がっても、上限を超えた部分の実費は旧電力が被ることに。
2016年4月の電力自由化以降に参入した新電力は調達コストの増加に耐えきれず、22年に燃料費調整額の上限を相次いで撤廃してしまった。旧電力も、規制料金以外の自由料金プラン(東京電力でいえば「スタンダードS」など、関西電力なら「なっトクでんき」など)には燃料費調整額の上限がない。
■赤字を垂れ流していた
新電力(大手では「東京ガスの電気」や「ソフトバンクでんき」など)ではこの冬、燃料費調整額が1kWhあたり12.99円まで上がった。これに対し、東京電力では5.13円に据え置かれたままだった(いずれも関東エリア)。1カ月の電気使用量が400kWhだったなら、燃料費調整額の上限がない新電力や旧電力の自由料金プランは規制料金より3千円前後、高くなっていた計算。逆に言えば旧電力はその差額分だけ“赤字を垂れ流していた”。
■当初申請から減額
「旧電力7社は経済産業省に規制料金の改定を申請し、審査中でした。早くて4月に値上げとなるはずでした」(曽我野さん)
その申請に“待った”をかけたのが河野太郎内閣府特命担当大臣。旧電力による新電力顧客情報の不正閲覧嫌疑やカルテル疑惑などと関連づけ、「もっと厳格に審査すべき」と噛みついたのである。4月中旬には全国5カ所で「公聴会」も開かれ、一般消費者から値上げに対する厳しい意見が出た。
「その結果、従来より厳しい査定が行われ、旧電力7社の申請内容から相当に減額された格好で値上げが認可されました」
こう説明するのは、日本エネルギー経済研究所研究理事の小笠原潤一さん。現在の単価や電源構成は10年以上前から変わっておらず、現状にそぐわないものとなっていた。
さて、規制料金はどれだけ高くなったのか? 6月1日の改定を受けてマスコミの大半が取り上げたのは、経産省が示した試算だ。もちろん計算自体は正しいのだが、22年11月時点と23年7月請求以降の比較なので実感がわきづらい。
また、基本料金と電力量料金は値上がりだが、年に1回見直される再エネ賦課金は5月から1kWhあたり1.4円に下がった。昨年度は3.45円なので半額以下になっている。