(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 開始1分の谷口彰悟(31)のヘディングによる先制ゴールは久保建英(22)の左サイドからのFKを決めたものだが、そもそもFKを得たのはセンターバックの板倉滉(26)が左ウイングの三笘薫(26)に大きく展開したからだった。板倉のロングパスを収めた三笘が得意のドリブルで仕掛けて相手のファウルを誘っている。

■状況に応じた選択を

 前半の終了間際に決まった日本の4点目もシンプルな縦への展開からだ。遠藤航(30)がベンチスタートでこの日キャプテンマークを巻いて中盤の底でプレーした守田英正(28)のバックパスをGKの大迫敬介(23)が前線へダイレクトで蹴り込んだ。相手を背にしながらセンターサークル内でボールを収めた上田綺世(24)がポスト役となって三笘に託すと、所属するブライトンで今季、大ブレイクしたウインガーはドリブルを開始。独特の間合いで相手DFに飛び込む隙を与えず、カットインからシュートを放った。これは惜しくも相手GKに防がれたが、こぼれたところに堂安律(25)がきっちり詰めていた。

 日本はボールを奪った後で相手の陣形が整う前に素早く攻めることが有効だと判断すると、迷わず縦へボールを動かした。ボール保持に固執しすぎた3月の反省を生かし、状況に応じたプレー選択を実践したのだ。

 実際、スペースがないと思えば、相手の陣形を広げるべく幅を取る動きからゴールへのルートを探っている。

 久保が自身の代表通算2ゴール目を決めた25分の場面がそうだった。まず最終ラインで左から右へとテンポよくパスをつなぎ、相手の守備陣形を揺さぶった上で、右センターバックの板倉が前に運んで内側に入ってきた久保に縦パスをつけた。それと同時に久保の外側を右サイドバックの菅原由勢(22)が駆け抜けて守備者の意識を引きつけ、久保は余裕を持って逆サイドの三笘に正確なサイドチェンジのパスを送ることに成功する。

 三笘からのクロスはゴール前に入り込んでいた旗手怜央(25)と上田に合わなかったが、こぼれ球を自ら回収して中央へ移動してきた久保にパス。左足でコントロールされたボールがサイドネットに突き刺さった。

■森保監督「表現できた」

 早々に退場者が出たことで相手が守ることに注力し、かえって難しい試合になることがよくある。ただ、この日はそうはならなかった。日本が採用した基本布陣の4-3-3(4-1-4-1)は中盤に逆三角形で人を配置することになるが、守田と田中碧(24)のボランチ二人が前に並び、その後方に守備力の高いボランチの遠藤が構えるアジア最終予選時の構成とは違っていた。今回は前に堂安と旗手というアタッカーが並び、その背後で守田がバランスを整える編成。相手との力関係を考慮しつつ、攻撃重視の姿勢で試合に臨んでいたことが起用した選手の特徴から、うかがえる。

次のページ