「日本の人にも見てもらいたい」と英語と日本語の両方の字幕をつけた。上映会企画は随時募集中※「The Ones Left Behind: The Plight of Single Mothers in Japan(取り残された人々:日本におけるシングルマザーの苦境)」 (c)Rionne McAvoy Film(写真:ライオーン・マカヴォイさん提供)
「日本の人にも見てもらいたい」と英語と日本語の両方の字幕をつけた。上映会企画は随時募集中※「The Ones Left Behind: The Plight of Single Mothers in Japan(取り残された人々:日本におけるシングルマザーの苦境)」 (c)Rionne McAvoy Film(写真:ライオーン・マカヴォイさん提供)

■「恥」と考える日本人

 シングルマザーの支援団体や子ども食堂合わせて百数十カ所に片っ端から取材依頼書を送った。訳のわからない外国人と思われたのか、返信さえくれないところも多かったが、一般社団法人「ハートフルファミリー」と「世田谷こども食堂・上馬」とは、この問題を根本から解決したいという思いでつながることができ、カメラを回し始めた。

 最初にインタビューしたのは子ども食堂を運営する女性。だが、食堂のことは語っても、シングルマザーである自身の事情は何一つ答えてくれなかった。

「不思議でした。でも少しずつ信頼関係を築き、いろんなシングルマザーに話を聞くうちに、日本人は苦しんでいる状況を人に見せたくない、助けを求めることは恥ずかしい、という思いが他国の人に比べてものすごく強いことに気づきました」

 1年半、自腹で取材を続け、76分の作品に仕上げた。海外の人も理解できるよう歴史的背景や、根底にある日本の非正規労働、男女の賃金格差、養育費の不払い問題なども丁寧に描いた。

「この作品は日本人には絶対に作れなかった。日本では『当然』とか『仕方ない』と思われていることも、外の視点から見れば全然そうではないし、僕は一切忖度(そんたく)しませんでした」

 そう語るマカヴォイさんは、政府・自治体の支援策に対する憤りを隠さない。

「制度はあってもその情報を当事者に届ける努力が全然足りていないし、手続きも複雑すぎます。それも彼女たちに『仕方ない』と思わせている大きな原因です。できることは山ほどある。映画を見て、ぜひ日本の人にも改めて考えてほしいです」

(フリーランス記者・石臥薫子)

AERA 2023年6月19日号