共演シーンの多い役者さんたちのなかには、「これまでで最もハードな現場」と言っている方もいて、僕自身、「誰かとコミュニケーションを取る体力すら温存しておきたい」と感じるほど、キツい現場です。
でも、大変ではあるけれど、ものすごくいい現場なんです。お芝居を合わせてちょっとした違和感を覚えたら「とりあえず、やれるだけやってみよう」とお互いに声を掛けますし、「とりあえずやってみること」を許容してくれる現場です。「やるしかない、やれるだけやってみよう」はいま、現場の合言葉になっています。みんながこんなに頑張っているのに報われないのは嫌だし、そんなことは僕の心が耐えられないです。
■「僕の話だ」と思えた
「ペンディングトレイン」が、メッセージ性の強い作品だということも影響していると思います。地球、環境、人類という大きなテーマを扱った作品であるからこそ、そうした作品が残っていかないと、僕は人を信じることを諦めてしまうのかもしれない。そんな気持ちにすらなっています。
――山田演じる主人公の直哉、そして赤楚衛二演じる優斗には、山田自身が投影されている。
山田:企画の段階、そして脚本の段階で、僕が思っていることがセリフに盛り込まれていました。赤楚くんが「山田くんと僕の二人で表現しているんだね」「これは山田くんそのものだね」と言ってくれたこともあります。
「ペントレ」9話の脚本には、瞬時に「僕の話だ」と思えた言葉がありました。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、今まで僕が読んできた脚本のなかで一番好きだと思いましたし、その言葉を目にした時は「やっと言えた」という気持ちになれた。「自分はこういうことをやりたかったんだ」と。
僕の考えていたこと、普段から口にしていたことを脚本家の金子ありささんが「多分、山田くんはこういうことを言いたいのだろうな」と汲み取ってくださったのだと思います。金子さんも脚本に「直哉」ではなく、「裕貴」と書いてしまったそうです。それくらいの気持ちで書いてくださった言葉に出合えたことは、自分のなかの大きな救いとなりました。
■観察と思考を続けた
――俳優としてのキャリアはエキストラからスタートし、俳優養成所に通い、キャリアを重ねてきた。いま、役者としての強みはどこにあると考えているか。
山田:勝ち負けではないですし、過信するつもりもないですが、ある程度は「お芝居の力では、負けないな」と思えるようになりました。そう思えるようになったのは、ここ最近のことです。まだまだできていないこと、力が出せていない部分はありますが、周囲を観察し続け、思考し続けたという自信はあります。誰かが寝ている間に撮影し、誰かがオフの時にも撮影をしてきましたし、俳優仲間に会っても「そんなに働いて大丈夫か?」としか言われない状況になるくらいやってきた、という自負はあります。
自分が考える“すごい役者”とは、使われ続ける役者です。お芝居のことはずっと考えていて、表現の面で「自分に足りないのはこういうところだな」と自分で見えていますし、なんとなく次の課題を把握しつつ、「もっとできるな」という感覚はあります。俳優である以上、見栄えではなく、「お芝居の力」として闘えるものは身につけていきたい。