金曜ドラマ「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」で主演を務める山田裕貴さん。着実にキャリアを積み重ね、思いがけず大役にたどり着いた。どんな役でも「俳優として役を生きること」に変わりはないが、主演であることの責任の重みを改めて知ることになったという。AERA 2023年6月12日号の記事を紹介する。
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――誰もがスマホを手にSNSをチェックし過ごす、いつもと変わらない朝、同じ電車に乗り合わせた乗客たちが見知らぬ未来へと投げ出される──。タイムワープした未来を舞台に描かれるドラマ「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」に主演している。ゴールデンプライム帯に放送される連続ドラマに主演するのは初めてのことだ。
山田裕貴(以下、山田):撮影に入るまでは、「主演」であることをまったくと言っていいほど意識していませんでした。ひと言、「ああ、すごいな」と。主演を務めるようになる人生になるとは思っていなかったですし、想像すらしていなかったので。常にお芝居の中心にいる、典型的な“主演俳優”にはならないだろうと思っていましたし、細く長く役者をやっていくのだろう、と自分では思っていました。
でも撮影が始まり、ドラマが放送されるようになってからは、自分でも信じられないくらい、現場の方々のことが気になるようになりました。共演するキャストに対し「芝居しにくくないかな」と考えたり、「スタッフさん、疲れていないかな」と気になったり。注目度ランキングや視聴率といったものが耳に入るようになると、「主演を務めていた方々は、こんなにも色々なことを気にしながら過ごしていたのか」と改めて知るようになりました。
■撮影現場の合言葉
皆さん、口では「気にしない」と言うと思うんです。でも、実際にその立場になってみると、気にならないわけがない。「殿(大河ドラマ『どうする家康』で共演している主演の松本潤さん)もこう思っていたのかな」とか、「(ドラマ『女神の教室~リーガル青春白書~』で共演した)北川景子さんもこんなことを感じていたのかな」とか。主演であることによってお芝居が変わるわけではないですし、役を生きることに変わりはないですが、主演であることの責任の重みを実感しました。
――視聴者にちゃんと届いているだろうか、伝わっているだろうか。そんな思いもより強くなったという。
山田:人間って、忘れていく生き物ですよね。もちろん、一部の方々には本当に心に残る作品になっていくのかもしれませんが、何年か後には、「あの作品良かった記憶があるけれど、どんな話だっけ?」と言われるのが僕らの仕事です。だからこそ、どうにか多くの人に響き、刺さるような作品にしていきたい。見てもらえなければ存在しないのと一緒ですし、何かを残せなければ「自分たちはいったい何をやっていたのだろう」という気持ちしか残りません。