AERA 2023年6月12日号より
AERA 2023年6月12日号より

 下の2人はオンラインゲーム上で習える英会話レッスンも受けている。レッスンは4人に1人のコーチが付くグループ制。今は人気ゲーム「フォートナイト」や「マインクラフト」をしながらレッスンを受けている。

「教科書で習うよりもやる気が出ていると思います。コーチから言葉遣いやマナーも教えてもらえるので、知らない人とやるよりも安全な世界です」

■メンタルにも影響する

 早稲田大学教授で医学博士の前橋明さんらが埼玉県で行った調査では、午後の自由な時間の費やし方でゲームなどの時間が1位になるのは小学3年生男子から。女子はテレビ、ビデオ視聴が多く、いずれも外遊びの時間は低下という結果に。こうした遊びの変化はメンタルにも影響する。海外の研究では、1日2時間以上デバイスを利用した子どもは人生の満足度や楽観性が低い可能性があるという報告が上がっている。また、外遊びでは太陽に当たることで生成されるビタミンDによってタンパク質の働きが活性化されるため、カルシウムやリンの吸収が促進されて骨格と歯の発育が促される。しかし、室内遊びのオンラインゲームでは、体に良いことは何もおこらない。

 サイバー空間での遊びが主流になりつつあるが、子どもの体力低下の懸念はないのか。順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授の鈴木宏哉さんは「教育熱心な家庭ほど、運動に対する意識も高くなっている」という。

「水泳やサッカー、野球など運動系の習い事をする子どもが多くなりました。東京都の中学生を対象に行った調査でも、(ゲームを含む)スクリーンタイムが長いことよりも、体を動かす時間があるかどうかの方が体力に影響することが分かりました」

 体力維持ということだけを見た場合、スクリーンタイムが長くても、活動時間をしっかり取れば問題はないという。ただし、子どもの自由遊びの時間は減っている。外遊びから育まれるものの補填には課題が残りそうだ。(フリーランス記者・宮本さおり/ライター・大楽眞衣子)

AERA 2023年6月12日号より抜粋