昨年、成年を迎えられた愛子さま
昨年、成年を迎えられた愛子さま
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 皇位の継承が男系男子に限られている現在、安定的な皇位継承が危ぶまれている。皇室の存続のために制度改正が求められるが、女性・女系天皇をめぐる議論は停滞したままだ。なぜ議論は進まないのか、そしてこれからの皇室のあり方について日本大学教授・古川隆久さんに聞いた。AERA 2023年6月12日号の記事を紹介する。

【写真】まさか1人だけドレスコードが伝わっていない?女性皇族がずらりと並んだ一枚

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 皇室を存続させていくためには、女性・女系天皇を容認するしかありません。大切なことは、次に皇室で生まれる人から制度を適用するということです。

 いま皇室にいる未婚の女性皇族は、結婚後に皇族の身分を離れることを前提として人生設計をしてきました。一方の悠仁さまは生まれて以降、いずれ皇位を継ぐ存在として過ごしてきた。この状況で、急にルール変更をすると大混乱が起きるのは当然のことです。愛子さまと悠仁さまのどちらがいいか、悪いかといった下品な話にもなってしまう。何よりご本人たちに、非常に酷です。「次の代から」として、今のうちに制度設計をしておけば、混乱は最小限にとどめることができると思います。

 2021年4月、菅義偉内閣の時に、安定的な皇位継承のあり方を議論する政府の有識者会議のヒアリングを受けました。冒頭の意見を出しましたが、全く採用されず、同年12月の報告書では、女性・女系天皇への言及すらありませんでした。

 私が意見を出した有識者会議のヒアリング相手は、保守派に偏っていたようにみえます。私は、保守派でも左派でもない真ん中にいる人間ですが、あの会議の中では私が最も「左」のひとりでしたから。05年11月、小泉政権の時の有識者会議では、女性・女系天皇を容認する最終報告書が出されているのに、大きな後退です。保守派の「伝統を守る」という現行憲法には出てこないような話にごまかされているから議論が進まないのです。

 旧宮家を皇族に復帰させて婿養子にする案がありますが、それはつまり、女性皇族が恋愛結婚できなくなるということです。それでいいのでしょうか。

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