新型コロナの入院患者を受け入れる病床を確保した医療機関には補助金が支払われる(撮影/写真映像部・松永卓也)
新型コロナの入院患者を受け入れる病床を確保した医療機関には補助金が支払われる(撮影/写真映像部・松永卓也)

 関東の主な医学系10大学の財務状況を本誌が調べたところ、新型コロナの補助金が急増し、コロナ禍前と比べ、全大学で利益が増えていることがわかった。AERA 2023年5月29日号の記事を紹介する。

【グラフ】関東の主な私立医大の補助金と利益の推移はこちら

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 国は、コロナ患者の病床を確保した場合、医療機関に病床確保料を支払っている。

 会計検査院によると、2020、21年度で3483医療機関に計3兆3848億円が交付された。この病床確保料は、医療関係のコロナ対策で最大の予算規模だ。大学病院を含む特定機能病院の補助額は割高で、1病床あたり1日最大43万円が支払われた。

 コロナ補助金が交付された病院の医業収支は21年度、平均7億円の黒字だった。コロナが5類に移行した5月8日以降、9月末までの補助額は半額に引き下げられている。

 病床確保をめぐっては補助金の返還や過大受給が取りざたされた。政府分科会の尾身茂会長が当時理事長だった地域医療機能推進機構(JCHO)と、国立病院機構(NHO)に支払われた病床確保料などコロナ禍に蓄えた1千億円超の積立金のうち、746億円は国庫に返納された。

 また、岡山大学病院が21年1月~22年3月で病床確保料18億円弱を過大に受給していたことが明らかになっている。

■「補助金バブル」

 医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は言う。

「大学病院は多くの診療科を持ついわば百貨店です。診療科の選択と集中ができず、経営が厳しいのです。そんななか、多額のコロナ補助金は天の恵みでしょう。大学病院はコロナ補助金バブルにわきました」

 本誌は、関東にある主な私立医学系大学10校の決算を調べた。私立大学では学校法人の決算が公表されているが、法人傘下の附属病院単体の決算は明記されていない。そこで、法人全体の補助金(経常費等補助金)と利益(基本金組入前当年度収支差額)を調べた。なお、獨協医科大学は法人ではなく大学の決算を用いた。

 その結果、調査したすべての大学でコロナ禍前と比べ、補助金が急増。利益も大幅に増えていた。

 東京医科大学は、19年度の補助金は5.7億円だったが、21年度は78億円と、コロナ禍前の13倍に急増している。19年度は128億円の赤字だったが、21年度は49億円の黒字に転じていた。

 東京女子医科大学は、20年度の補助金は前年度の3.5倍の127億円になり、利益は1.7倍の82億円だった。

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