■補助金が利益に
大学の会計に詳しい専修大学の小藤康夫教授は言う。
「大学の補助金がこんなに急増することは通常ありません。経営努力があったのかもしれませんが、コロナ補助金の多くが利益に回っていると考えられます」
東京女子医科大学の20年度の医療収入は前年度から77億円低下した一方、同年度のコロナ補助金は90億円だった。コロナ補助金が医療収入の減額分を上回った。
同大学の20年度の事業報告書には、医療収入が77億円落ち込んだものの「コロナ患者受入に関連した国または自治体から補助金の交付を受けたこと、また東医療センター移転に関連して交付を受けた補助金(20億円)も含めますと、最終的な収支差額は昨年(19年)度を上回りプラスとなっております」と記されている。
小藤教授は言う。
「過大受給をしていれば別ですが、黒字になること自体は悪いことではありません。どの大学も少子化の波を受けていますし、建物建て替えなどもしたいですから貯蓄したいでしょう」
本誌の取材に大学側は、「支給いただいた補助金は、各基準に基づき適切に執行しております」(東京医科大学広報室)
「当局より監査を受け、適正に措置された事案であることを確認しております」(東京女子医科大学広報室)と取材に回答している。
聖マリアンナ医科大学総務課は「コロナ支援金の一部は今後の感染症対策に充当するため、他の運用資産とは区別し『感染症対策等引当特定資産』として学校法人会計基準に則り計上しています」と、補助金の使用方針を明確にしている。
コロナ禍では、医療従事者の確保や待遇改善などが社会的な課題に挙がった。
全国医師ユニオンの植山直人代表は言う。
「経営が潤っても、現場は手当はなしか、もらえればいい方で、1人1日数千円でした」
■現場に還元薄く
同ユニオンが20年春、医師172人にウェブでアンケートを取ったところ、コロナ診療をするにあたって危険手当など特別な手当をもらったのは18%にとどまったという。
そうしたなかで、人件費を減額した大学もある。東京慈恵会医科大学の20年度の決算書にはこのような内容が記されている。
感染拡大により医療収入が低下。そこで、人件費を含む経費を削減した結果、予定外のコロナ補助金111億円や保護者らの寄付を受けて、59億円の利益が出た。