じんわりとした、そのあたたかいものは、感情です。感情は「今」この瞬間にしか存在しません。この瞬間、瞬間の積み重ねこそが愛ではないでしょうか。いずれにしても愛は定義するものではなく、感じるものです。そして「今」に宿るものだと思います。
Q:熟年離婚しないために大切なことは?
A:僕の作品に出てくれる女性に離婚に至る原因を尋ねると、多くに共通するのは、夫が妻に、妻が夫に、本当の自分を出してこなかったということです。良いところだけでなく、弱点やコンプレックスも全部見せるなかで信頼関係が生まれます。
夫婦間に会話があればお互いにわかり合えている、というわけではありません。
かつて、サイト上で女性からの愛と性の相談に乗っていたころ、やってきた奥さんは離婚寸前という状態でした。旦那さんに何を言っても理屈で返され、それがもう耐えられないと言うのです。旦那さんからすればコミュニケーションが取れている。でも、奥さんが求めているのは論理的な解釈ではなく「心」だったわけですね。これは大きなすれ違いです。一般的な社会生活ならば、頭脳と頭脳のコミュニケーションで成り立ちますが、夫婦生活においては、お互いの心が交わるコミュニオンと、相手を思いやる「対人的感性」が必要不可欠です。
その「対人的感性」は心がイクオーガズムによって成熟します。心と心がつながる営みができれば、セックスレスはもちろん、不倫や離婚、DVや虐待まで激減するのになぁと僕は思うのです。
(構成/大道絵里子)
※週刊朝日 2023年6月2日号より抜粋