■「音楽が居場所になっていない」
――急激なスピードでエンタメも多様化していますもんね。答えは出ましたか。
今はみんなユーチューブに救いを求めているんですよね。旭川のいじめ事件で亡くなられた女の子も配信者に相談していたそうです。本当は音楽で救いたい存在なんですけど、音楽っていうものがそういう場所にいない理由であったり、つらい人たちを救うにはミュージシャンとしてどういう形があるのかとか、考える機会になりました。病気になってたくさんの方に迷惑をかけたし、自分にとってもすごく大きなことでしたけど、いろんなことを知れるチャンスがあったっていうのはよかったなって思っています。
――ミュージシャンの方からの「音楽が居場所になっていない」という言葉はずしりときます。
音楽から求めるものが変わったって言ったほうがいいかもしれません。アウトプットが変わったのもあると思う。カセットテープからCDになって、サブスクリプションになって、アルバム全体やミュージシャンをではなく、一つの曲を好きになっていく。「タイトルも歌っている人も歌詞もわからないけれど、この曲が好き」っていう状態になっているわけじゃないですか。
世界で見ても、CDよりアナログレコードのほうの売り上げが上がっていたりとかして。サブスクリプションで古い音楽も新しいものとして聴ける時代がきていますけど、人への深度みたいなものは変化していってるんじゃないかなって思っているんです。その深度をどう復権していくか、音楽エンターテイメントとして考えていかないといけないところかなとも思いましたし、ライブビジネスというものが大きく求められていく時代がくるんだなというか。
音楽のオンライン映像コンテンツって、著作権の問題で全然広がらないんですよね。法整備が進めばいろいろと変化していくんじゃないかなって思っていて。リアルライブの感動とオンラインライブの感動って、舞台と映画くらい違うんです。リアルだけが素晴らしいっていうことでなくて、映像コンテンツも素晴らしい。違う感動もあるんだってことを訴えていければいいなと思います。