■親子で向き合い気持ち伝える
──親を知るということ?
親にも子どもだった時代があり、人生の歴史があります。それを会話ができるうちに聞いて、それを一緒に記録してまとめていくんです。私も「母のドリル」を作り、母に埋めてもらったことがあるんです。「学校の授業で好きだった科目は何ですか」に母は「歴史」と書いていました。それを見て「えぇー! ママから歴史のこと教えてもらったこと一回もないけどな(笑)」って話しました。
会話をしながら書いてもらう。母もきっと埋めていくのが楽しかったと思います。そんなノートの原案を作って多くの人に使ってもらえたらいいなと思っています。市販のはちょっと事務的(笑)。質問内容も楽しくなくて、私はあまり書き進められなかったんです。こういうのは、楽しくやりたいですよね。
──新田さんは、「介護はコミュニケーション」と言います。
毎日母に電話をする私の姿を長く見てきたせいか、電話などあまりしてこなかった夫も、電話をする回数が増え、義母との関係性も変わってきたように思います。大人になってからの親子の向き合い方って本当に難しいですよね。だからいっぱい話して気持ちを伝えて、つながりを持ち続けることが大切です。
──超高齢化社会で介護をする人が減っています。
理想かもしれないけれど、やっぱり介護って家族でやってほしいと思います。誰か一人に負担がかかるワンオペ介護にならないように。あえて自分の時間を作って息抜きし、頑張っている自分をほめてあげながら、自分に優しくすれば周囲にも優しくなれます。自分で自分の環境を整えて、いい循環を作っていく。介護はできることならやったほうがいいと思います。やってダメならやめればいいし、時には逃げ出したっていい。一人で抱え込まないで、「逃げ道」を作ってほしいと思います。
──最後に客員教授以外の活動について。
月1回、ファンクラブの方に生配信している場があるので、これまでの介護体験を大切にして、これからもファンの方とか、介護仲間とかにヒアリングしたり、情報収集したりしながら、ずっとブラッシュアップし続けられたらいいなあと思っています。
(構成/大崎百紀)
※週刊朝日 2023年5月26日号