西原さん(左)と神足さん
西原さん(左)と神足さん
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 1992年から2年間にわたり本誌で連載された「恨ミシュラン」。漫画家の西原(サイバラ)理恵子さんと、「コータリン」ことコラムニストの神足(コウタリ)裕司さんの“サイコウ”コンビが、評判の名店を「恨ミ度」でボロクソに採点した。2人が評価した店の「その後」を追った。

【画像】連載当時の誌面がこちら


*  *  *


「もう30年前になるんですね」


 そう振り返るのは、東京・神田にある鳥すきの名店「ぼたん」の5代目だ。連載では西原さんが漫画で「死んだって二度と行かない」と怒りを爆発させれば、コータリンは常連にならないと「牢獄にいて意地悪な看守から受けるようなサービス」と切り捨てている(92年12月18日号)。2人がそろって指摘したのは、注文する前から仲居さんが「うちはこれしかないから」と鳥すきセット(5800円、当時)をテーブルにドンと置いたこと。本家のミシュランよろしく2人がつけた「恨ミ度」はそろって「五つ顔」と最悪の評価だった。


 今もさぞお怒りではと予測していたが、5代目という男性店主にそんな気配はなく、淡々と話してくれた。


「先代がやっていた時代のことですので詳しくは覚えていませんが、悪い評価を受けたことは記憶しています。その時代はお二人が指摘したとおり、サービスが良くなかったという自覚は当方にもあり、最悪の評価も仕方ないかなと思いました」


 続けて彼は、こんなふうに話す。


「今でもたまにお客様から“『恨ミシュラン』に載ってたね”と言われることがあります。でも皆さん、“あんなふうに書かれてたけど、サービスよくなってるじゃない。悪く書かれてよかったんじゃないの?”っておっしゃってくれます。西原さんが漫画で酷評していた仲居さんたちも、もう入れ替わっています。今はお客様に喜んでもらえるようなサービスを心がけています」


 バブル期には長蛇の列ができていた東京・荻窪ラーメンの元祖「丸福」と「春木屋」にもサイコウコンビは容赦がなかった(93年3月19日号)。

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