「待ってましたとばかり、ニヤッとしたんじゃないでしょうか。あの表情は一つの脅しで、解散権は俺にあるんだと誇示したようなもので、主導権を握ろうとしてあらかじめ考えていたのでしょう」

 自民党の閣僚経験者がそう解説する。

 6月中に解散、7月に選挙となれば「難題」も山積する。改正公職選挙法の「10増10減」で、自民党内でも選挙区が一つ減る山口県は林芳正外相と安倍晋三元首相の後継、吉田真次衆院議員の間で激しい公認争いが続くなど、まだ調整がついていない小選挙区がある。東京では公明党と折り合いがつかずに「選挙協力は解消」と突き付けられ、修復が図られていない状況だ。

「10増10減」で増えるのは、5増の東京など首都圏と愛知だ。

「地方では自民党が優勢な地域が多いが、無党派層が多い首都圏では世論で一気に情勢が変わる。小選挙区全議席の30%近くが首都圏というなか、解散を打ったはいいがなんらかのスキャンダルに見舞われるとドミノ倒しのようになりかねません。特にマイナンバーカードの問題と異次元の少子化対策は大丈夫なのか心配です」(前出の閣僚経験者)

 マイナンバーカードをめぐってはトラブルが続出し、国会では河野太郎デジタル相の「更迭」まで求められる事態になっている。

 立憲民主党の幹部は、

「2007年に『消えた年金』記録が大問題となった。年金記録の持ち主がわからなかったり、保険料を支払ったのに行政がきちんと記録をしていなかったりなど、政府の失態で世論が大きく動いた。直後の参院選で自民党は大敗し、与党は過半数を割り込んだ。旧民主党は議席を伸ばし、初の第1党となって後の政権交代にもつながった。マイナンバーカードと保険証の廃止、異次元といいながら実現性に疑問の少子化対策。解散・総選挙でここがクローズアップされれば、野党は勝負できる」

 と意気込む。

 自民党の中からも、

「選挙をやって議席を伸ばすのは維新だ。態勢が整っていない今の状況でしたほうが、仮に自民党が議席を減らしてもダメージが少なくて済む」

 と早期の解散・総選挙に期待する声は少なくない。

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「上から選挙準備しろと言われた」