北海道の民放テレビ局関係者は、こう指摘する。
「北海道はコロナ禍で景気が落ち込んで、財布のひもがきつくなっている。サウナや天然温泉を楽しみながら観戦するという発想は斬新だが、楽しめるのはお金に余裕のある一部の来場客だけ。チケット代や食事の料金も高いという指摘が多い。札幌ドームは近くにコインパーキングがたくさんありましたが、エスコンは球場の4000台以外は周辺に駐車場が少ない。無断駐車が目立ち、近隣住民とトラブルになったケースもあります。球場の帰りもシャトルバスの本数が少ないという声が多い。リピーターのファンを増やすために今後どのように改善していくかですね」
エスコンフィールド北海道は時期や曜日によってチケット価格が変わる。また、駐車代も試合開催日は1500~3000円の価格内で変動する。日本発の価格専門のコンサルティング会社である、 プライシングスタジオ株式会社のプライスコンサルタント・辻佑介氏は、こう分析する。
「お客様は実際の商品を購入する際に、記憶の中にある価格を基準にします。これを内的参照価格と言いますが、実売価格が内的参照価格を上回ると割高感を感じられてしまうことがあります。エスコンフィールド北海道の駐車場の場合は、駐車代が少し高いように感じるお客様が多いとお聞きしました。これは、お客様が札幌ドーム時代の駐車場料金(2500円)を内的参照価格としていることが一因として考えられます。そういった背景を加味すると、まずはお客様がどの程度まで支払ってもよいと感じているかを調査等で把握して、金額を設定することは一つの打ち手になるかと考えます。また、調査の際には満車率が高いことや、チームの成績など、駐車代に影響を与える可能性がある要素と支払ってもよいと感じている価格との関係性も分析出来れば、今後の打ち手にも繋げられるかと考えられます」
DeNAを取材するスポーツ紙記者は、「魅力あるチーム作りが重要」と力説する。
「TBSが親会社の時の横浜スタジアムは空席が目立ち、閑古鳥が鳴いていたが、11年にDeNAが親会社になって以降はファンを球場に呼び込むために様々なイベントを敢行し、19年の来場者数は過去最高の228万人を記録しました。エスコンと違い、横浜スタジアムは駅前の好立地なので環境は違うかもしれませんが、DeNAの取り組みは参考になる部分は多いと思います。また、DeNA初代監督を務めた中畑清監督の功績も大きい。チームに注目してもらうために、メディアに積極的に発信して大きく扱ってもらうことで、新規のファンを大きく開拓してくれた。成績は芳しくなかったが、筒香(嘉智、現レンジャーズ傘下3A)、梶谷(隆幸、巨人)ら主力選手たちを我慢強く起用して魅力あふれる野球を見せてくれました。新庄監督は今年になってパフォーマンスを封印していますが、もったいないなと感じます。『客寄せピエロ』と揶揄されてもいいんですよ。その後に結果を残せば周囲の見方は変わりますから。清宮幸太郎、野村佑希、伊藤大海、吉田輝星とタレント性がある選手も多い。エスコンは独自色がある素晴らしい球場ですし、交通アクセスの問題などを整備してチームが強くなれば自然と観客は増えると思います」
エスコンフィールド北海道は3月に開業してまだ間もない。1人でも多くのファンを満足させるために、今後の取り組みに期待したい。(今川秀悟)