家族の世話を甲斐甲斐しく焼き、クッキーまで焼いて彼らの帰りを家で待つ──こんな母親像は30~40年ほど前は当然のものとされていましたが、今や保守的な固定観念だと敬遠されます。母になってもひとりの女性として自由でいよう、自分を大切にしよう、という向きが強く、母の日のプレゼントもアクセサリーやメイク道具、アロマグッズやルームウェアなど美やくつろぎを求める品々が選ばれます。日本ではキッチンツールや家電、エプロンなども定番のプレゼントですが、アメリカではあまりおすすめされません。

 アメリカの「母になっても自分を優先させていいんだよ」というメッセージは、今や「母になっても自己実現すべし」とプレッシャーを与えるまでになっています。母でいるだけでは不十分とすら感じさせます。実際周りを見回すと、子どもが何人もいるのにお洒落でジムに通って起業して……と縦横無尽に活躍するスーパーウーマンがたくさんいます。上昇志向の女性にとっては良妻賢母像を押し付けられないので居心地がいいかもしれませんが、子育てで忙しいからと言い訳をつけてすべてを後回しにする自分は圧倒され、疲労を覚えることもしばしばでした。アメリカで母をやっていくのはキツイ。だからこそ我が子以外のたくさんの人に「Happy Mother’s Day!」と労ってもらう必要があるのかもしれないと思うくらいです。

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